「失礼ですが、麻由美さん!麻由美さんはアルバイトをせずに役者の収入だけでいつ頃から食べていけるようになったんですか?」
このマクベスの稽古が始まったばかりの頃、僕は若村麻由美さんにそう尋ねる。麻由美さんは、幸せな事にデビュー以来、約二十年役者の収入のみで食べさせてもらってます、と答える。
僕は『売れている』役者さんを純粋に尊敬する。『売れている役者』が好きなんて言うと、あたかもミーハーな有名人好きなように聞こえるかもしれないが、そういう意味ではなく社会にそれほどまで認められている、その実力に敬意を表するのである。
売れているという事は社会が
《あなたのパフォーマンスに対してこれほどの報酬を与えます。もしくはこれほどの報酬を与えるのであなたのパフォーマンスを見せてください。》
と言ってるようなものであろう。少なくとも僕はそう理解している。
『売れたって売れなくたってそんな事どうでもいいんだよ。』
僕にとっては、これは売れている人のみが許される発言である。売れていない人がこれを言うのはただの負け犬の遠吠えにしか聞こえぬ。
その為にはどうしたらいいのか…。まずは毎回お得感を客さんに感じさせる高いレベルのパフォーマンスなり作品を創っていく必要があるのではなかろうか。
チケット3000円なら5000円分のパフォーマンスを。5000円なら8000円分のパフォーマンスを!10000円なら…えーと…できれば15000円分の…いや、それはさすがにお得過ぎ!?
とにかく客さんが
《もっとチケット高くてもいいんじゃない!?》
そう感じるようなパフォーマンスが毎回出来れば売れて行くような気がする。
僕のパフォーマンスはいくらだ?契約書に書かれたギャラの額とにらめっこをするそんな八月の長い夜。

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