【先に始めてますね。】
一年生の男子、渡辺翔(わたなべしょう)君からメールが届く。
小学低学年生向け『オペラ座の怪人』を読書中の僕はそっと本を閉じる。
劇場のすぐ側には中島中学校があり、その向かいには一般の人間が利用出来る体育館がある。その体育館の入口を入るとすぐにトレーニングマシンが数台ある。そこで何人かの一年生男子が体を鍛えているという。僕も後から駆け付ける。
「7…8…9…はい!ラスト!10 …っ!!」
「あー効くなぁ!」
一年生男子、渡辺翔君と内田恭平君はお互いに励まし合いながらトレーニングをこなしている。傍らのiPodが『ロッキーのテーマ』を歌っている。
「おぉ…やってるねぇ。君達ぃ。」
「あ!鎌倉さん。でもどうして藤岡ひろし…?」
「いや…ねぇ…はは…気にしないでぇ。続けてぇ。」
彼らに負けてはいられぬとマシンにまたがる。
「いやぁ…暑いねぇ…。」
彼らに負けてはいられぬと不用意に服を脱ぐ。
「え!?どうして服脱ぐんですか!?」
「やっぱりねぇ…体鍛えるなら…男なら…裸にならないとぉ。ちょっと筋肉チェックにトイレへ…。」
「何しにいくんすか!?」
「いや!体を見に行くのさ!どこがたるんで、どこをつけたいのか、それをチェックだよ!」
トイレから戻るや否や彼らも服を脱ぎだした。そしてマシンを少しこなしては頻繁にトイレに行き、鏡の前でボディチェックをする彼らを僕はまばゆい気持ちで見守る。
裸の男三人。互いの体を褒め合い、励まし合う。自然と笑みがこぼれる。iPodは力の限りロッキーを歌い続けている。
「よし!こうなったらこれから毎日体を鍛え続けよう!体鍛えれば藤岡ひろしや、高田延彦みたくいい声にもなるかもな!『素敵な声は素敵な肉体に宿る』か!そう。俺達のユニット名は…ラブ…裸部と書いてラブと読む!」
「(内田君)ラブですか!よぉし!最後にもうワンセットだ!」
「(僕)こらこら!あんまり張り切り過ぎるな!ははは!結成したばかりだぞぉ!」
〜トレーニング終了。意気揚々、ラブは劇場に戻る。おっと!制作部の友居さんではないか。
「(友居さん)おぉ!いたいた!そこの中島中学校でインフルエンザが流行って学級閉鎖しちゃったらしいから、体育館出入り禁止な!そこの中学生も体育館を頻繁に利用してるらしいからさ、インフルエンザにかかったら大変だから。わかった!?出入り禁止な。」ラブ解散。結成記念に撮った最初で最後の一枚。思い出よ。素敵なままで。


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