鹿児島。鹿児島は必ず行く所がある。いつも決まっている。
【晋どん、もうここらでよか】
ホテルの裏山には展望台があり、頂上までは遊歩道が続く。僕は山を登る。
《にゃーん…》
思わずその声を見る。猫がいる。可愛いも……はっ!何故だ!?山を登っている最中に猫に会うと感じるこの不吉な予感は…。ゆっくり後ろを振り返る。
「こんにちは」
散策に来た地元の方が挨拶してくれる。そうだよな…。まさかこんな所に…いる訳ないか。ここはいつかの『危険崩壊区域』ではない。
何年か前のブログにも書いたがこの山は100年以上前、西郷隆盛が明治新政府軍に追い詰められた山である。西郷ら反乱軍わずか300に対し、新政府軍は4万だったという。
夜明け方、山を下りたものの、足腰に銃弾を受けた西郷さん、もはや逃げる事を断念し、自分の側近である、別府晋介(べっぷしんすけ)に言った一言が先ほど書いた…
「晋どん、もうここらでよか。(晋さん、もうこのへんで良いよ。)」
である。
静かにそう言う西郷さんの首を泣きながら斬り落とす別府晋介…。
「『晋どん、もうここらでよか』…か。」
敵軍の大将、山県有朋(やまがたありとも)は西郷の死体を前に
「あなたは誠の豪傑であった。ただ残念なのはあなたをここまで追い込んだ時の流れである。」
といつまでも黙祷をささげたという。
「晋どん、もうここらで…晋どん……晋どん!?」
〜
「(進藤さん)で、鎌倉さん!一体どこなのよ?コインランドリーは?」
「(僕)この辺りにあったハズだけどなぁ…おかしいなぁ…」
「(進藤さん)もしかして君、俺を連れまわすだけ連れまわりして、やっぱり無い!なんて言うんじゃないだろうなぁ!」
「(僕)あれ…確かに…おかしいなぁ…」
「(進藤さん)もう土下座だな。君、ここで僕に土下座しろ。」
「(僕)進どん、もうここらでよか…」
「(進藤さん)?」
〜次の日〜
「(進藤さん)で、川村さん!聞いてよ!昨日さ!この鎌倉のオッサンが劇場近くにコインランドリーあるよ、って言うからついていったら散々歩かされた揚句なくってさぁ!もう散々だよ!ついていった僕が馬鹿でしたよ。」
「(僕)進どん、もうそこらでよか。」
「(進藤さん)さらには古畑のモノマネまでし始めて
『えーっへっへっへ、コインランドリーありませんでした!』
とか言い出すしさ…」
「(僕)進どん、もうそこらでよか…」
「(進藤さん)今時、古畑のモノマネするだけでもかなりズレてるのに、恥ずかしい事に近くを通行人が通ってる時はやらずに周りに人がいなくなると、また古畑やり始めるわけよ。このオッサン。」
「(僕)進どん、もうそこらでよか…」
「(進藤さん)聞かれて恥ずかしいならやらなきゃいいのに…」
「(僕)進どん!もうそこらで…!」
「(進藤さん)いやだから鹿児島入りしてから何かと君が使っているその『進どん、もうそこらでよか』って何よ!?それ。」


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