僕は後ろ向きな性格だからだろうか。未来の想像より過去の想像が好きである。
未来というのは僕にはあまりにも見えづらく想像をするのが困難だ。でも過去なら…つまり簡単に言っちゃえば
『遺跡が好き』なのである。
とは言え僕が行った事のある世界遺産は数える程。知床半島と、姫路城、あと…あ!エジプトのピラミッド!でも世界遺産とまで行かずともそんな遺跡から過去への想像をする。
未来を想像するにはドラえもんがいる。ガンダムがいる。レーザーや、宇宙戦艦がいる。でも未来を想像させるそれらは現実には存在しない。しかしピラミッドは存在する。モアイ像は存在する。ナスカの地上絵は存在する。マチュピチュは存在する。つまり気の遠くなるような過去、必ず誰かが何かの為にそれを造った事は紛れも無い事実なのである。
一体いつ、誰が、何の為に?どうやって造ったんだろう?これが出来た時この周りはどんな環境だったんだろう?例えばエジプトのクフ王のあの有名なピラミッド。非常に高度な計算に基づいた建造物であり、現在の世界レベルの一流建築家が知恵を搾りあっても建てられないという。一体どうやって…。でも確かに誰かが建てたわけである。現在、出来ないと言われる事をやってのけた過去があるのである。
また太平洋戦争時、沢山のドラマを生み出した『神風特攻隊』の宿泊していた施設や飛行場の後に今は平和祈念館があり隊員の遺書や遺品が展示されている。緩やかな坂を登った岡の上にその建物はある。あの東シナ海に散っていった若き隊員達はこの坂を下りて町に繰り出し、この岡から飛び立っていったのである。これは紛れも無い事実。彼らが立ったであろう場所に僕も立ち、少し変わったかもしれないが、彼らが見たであろう景色を見る。怖かったろうな。辛かったろうな。理不尽だったろうな。乏しい乏しい僕の想像は小さな頭の中でフル回転するのである。
二千年先の未来を想像させてくれるものは現存しないが二千年前の過去を想像させてくれるものは現存する。そしてその遺物が僕に与えてくれるささやかで途方もない想像!これに歴史の醍醐味を感じるのである。

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