さすがに水がこれ以上出ないのはキツイ!公演が終わって帰宅した僕は真っ先に下の階に住む大家さんに事情を説明に行く。
「ああ、こんばんは。大家さん。」
「(大家さん)ああ!鎌倉さぁん!こんばんは。」
「あのー、大家さんとこは水って出ます?」
「(大家さん)えぇっ?」
この大家さん、実は90近いお年寄りでなにぶん耳が遠い。
「あのぅ!大家ぁさんとこはぁ!水がぁ!出ますかぁ!?」
「(大家さん)あぁー!あれねぇ!ごめんなさいね!」
《あぁ!やっぱりなんか工事かなんかでもあったのかな?》
「(大家さん)私ねぇ、午前中、慈恵医大病院に行ってたのよぉ。」
《違う…違うぞ…「午前中、慈恵医大病院に行ってたのよぉ。」なんていう解答が返ってくるような質問してないぞ。》
「いやね!大家さぁん!僕の部屋ぁ、」
「(大家さん)えぇ!?」
「僕の部屋ぁ、」
「(大家さん)はい。」
「水がぁ、出ないんですよぉ!」
「(大家さん)ごめんなさいねぇ。私、耳が遠くてね。」
ダメだ。さすがにこう耳が遠くては会話が成立しない。事態を伝えられぬ今、一旦部屋に戻る。どうする?水道局には『ウチ(水道局)の方では水は止めてないから大家さんと相談してみてください』、と言われたけどその大家さんとの会話が成立しない…伝えられなきゃどうしようもない。とにかくもう一度、水道局に電話しよう。それでこの…
〔コンコンコン…〕
「鎌倉さぁん。」
大家さんだ。あれ?どうしたのかな?
「はい。」
「(大家さん)あぁ…鎌倉さん…」
「どうしました?」
「(大家さん)鎌倉さん…」
「はい。」
「(大家さん)私に何か伝えたかった事があるんじゃないかと思ってね…」
《ジャストミートぉ!それだよ!正にそれ!めっちゃそれ!めっちゃ伝わってるやん!いいよぉ!グッドです!僕が大家さんに会いに行った1番メインの意味理解してますよぉ!》
「いや、実は水が出なくてですねぇ…」
「(大家さん)はぁっ?」
誰かテレパシー使える人、連れて来て下さい。

0