所は新潟。終演後、ホテルに戻るや否や真っ赤なジャージに着替える。背中に大きく
【PLAY BOY】
とバックプリントされたこのジャージは父、健吉さんが還暦祝いの際に身内からプレゼントされたものであり、
「さすがに60過ぎてこの真っ赤なジャージはちょっと恥ずかしいからお前が着ろ!」
と父から息子の僕に引き継がれたジャージである。
走りに行く。ホテルに戻って15分以上ゆっくりしたら走りに行きたくなくなる確率は90%を越える。この15分以内が僕のデッドタイムである。案外、体は嫌がっていない。しかし心は嫌がっている。そんな心を説得、いや、恫喝し僕は走りに行く。
所は新潟。まずは新潟駅の方面へ。案外近い。ホテルから4分くらいで駅に到着。行くあてに困った時、僕がかじをとるのは繁華街。その街の1番賑やかな所を駆け抜ける!客引きが寄ってくる。
「どうですか?キャバクラ、お兄さん。」
「遊んで行きませんか?お店決まってますか?」
「セクシー居酒屋どうですか?」
おいおい…みんな勘違いしてないか…今、俺はトレーニング中なんだぜ。見りゃあ分かるだろーがよ…。話しかける相手を間違えてないか…?
群がる客引きをフットワークでかわしながら僕は駆け抜ける!背中に『PLAY BOY』と書かれたジャージを身にまとって!
繁華街を抜け、折り返してホテル方面へ。万代橋を渡る。
あ…僕が時々もらす、素敵という風景がここにもある。
リバーサイド。向こう岸には高層ビル群。そしてそんなビルの間に三日月が低く見えている。
写真に収める。ダメだ…しょぼい…カメラを通すと全く伝えられないこの景色。
低い月が僕は好き。夜空に高く輝く月より、まるでビルに触れそうに低く妖しく光っている月に僕は惹かれる。
月の事をイタリア語ではルナというとか。ルナティックな夜。ああ逃げ込みたい。るなぱあくに…。


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