「(僕)でも言うてみりゃさあ、吉田君なんて僕の息子であってもおかしくない年齢な訳さ。」
吉田君とは今、無名塾で一番若い役者、吉田道広(みちひろ)君の事である。弱冠19歳。僕との年齢差、実に20歳である。
「(川村さん)えーっ、そうですか?そんなに離れてますか?」
「(僕)だって20離れてんだぜ?」
「(川村さん)あぁ…まぁ、そうですか…」
「(僕)もうすぐ40なのにさぁ、子供はおろか、結婚も出来ないなんてさ…もう…失敗の人生だね!」
「(川村さん)なんて事言うんですか!!」
「(僕)もう僕なんか、子供出来るのちょっと怖いもん!」
「(川村さん)て言うのは?」
「(僕)だってさ…例えば結婚適齢期の20代半ばで結婚したとして、それで例えば25歳で子供が出来たとしよう。その子が大きくなって思春期にさしかかる頃、親はちょうど今の僕と川村さんぐらいの年齢ですわな。」
「(川村さん)まぁ、そうですねぇ。」
「(僕)子供が生意気な反抗しはじめても、40になるかならないかぐらいの若さがあれば力で子供の反抗をねじ伏せる事も出来ましょうし、子供も親に対して反抗するのもかなりの勇気がいるでしょう。」
「(川村さん)まぁ、そうですね。」
「(僕)しかしだ!もし最短で来年にでも僕に子供が出来たとしても僕はすでに40。子供が反抗し始める頃には50代半ば。これちょっと、力じゃねじ伏せられない訳ですよ。」
「(川村さん)………」
「(僕)息子が盗んだバイクで走り出す頃には僕はもうジジイになりかけてる訳よ!力じゃ太刀打ち出来なくなってる訳よ。」
「(川村さん)確かに…。」
「(僕)『正男や!やめてくれ!暴力はやめてくれぇ!正男や!』みたいなさ…」
「(川村さん)鎌倉さんの息子さん、正男って名前なんですか…」
「(僕)いやいや例えば…の話だよ。」
「(川村さん)でも僕もそれは心配してますよ。だから僕はちから的に反抗しにくい女の子しか欲しくないですね。男はごめんです。男が生まれたら困りますね… 」
「(僕)じゃあ、男が生まれたら、何かのギリシャ神話みたいに『誰かに拾われるんだよぉ』ってたらいに乗っけて川に流しちゃったりする訳?」
「(川村さん)いや、そうは言いませんが… 」
「(僕)ラオウにやられるリュウケンみたいになっちゃうぜ。」
「(川村さん)だから女の子がいい訳ですよ。さすがに娘には力で負けないでしょう!」
「(僕)いや分かんないぜ!娘の彼氏にボコられるかもよ?『正男君!やめたまえ!正男君っ!暴力はやめたまえ!』って。」
「(川村さん)いやだから!正男君て誰なんですか!?なんで正男君なんですか!?鎌倉さんにとっての正男君って何なんですか!」


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