ナビ朝7時半。僕らの乗るハイエースは出発する。僕らブラボーカンパニーはこの車で30分かけて作業場に向かう。
しかし今日は撮影出番の関係上、いつもハイエースを運転している佐藤さん達四人はロケバスで先発してしまう。残されたメンバーは僕、金子君、そして保坂君の三人である。僕ら三人は免許はあるが、僕と金子君はペーパードライバー。必然的に保坂君がドライバーとなる訳だがいつも佐藤さんが運転している為、僕ら三人共、道のりに自信がない。ホテルから目的地まで約20キロ…。
「でも…佐藤さんも…分からなければナビを頼ればいいから、って言ってましたからねぇ…ナビを頼りに行けばいいっすよぉ。」
と言うのはドライバーの保坂君。
そうやね。マイナーな近道を行くいつもの佐藤さんの行き方を下手に記憶めぐらさずにナビに頼って王道を行こうぜ。
車は快調に、残り少なくなった夏の朝を走っていく。「(保坂君)確か、こっちの道行くといつもの佐藤さんの道ですよねぇ?でも道幅狭いし…」
「(僕)ここはナビ通り、王道行きましょうよ!保坂さん!」
「(保坂君)ほい!あえてナビに従います!」
車はますます快調。
目の前には大きな鳥居が見える。
「(保坂君)確か、この鳥居の前の信号を右折してましたよね…」
「(僕)うん。でもナビは直進しろ、と出てるという事は…」
「(保坂さんと僕)鳥居くぐりましょうよ!」
ナビの音声案内に僕らは従う。その昔、フランス軍兵士は『私についてきなさい!』と叫ぶ、ジャンヌダルクに続いたという。今の僕らにはこの音声案内の女性の声はまさしくジャンヌ!今、僕らはジャンヌに従い鳥居をくぐる。その後もジャンヌに従い山道を。
〜15分後〜
「(僕)着かないね…」
「(保坂さん)着かないっすね…。」
「(僕)いつもは30分かからないくらいなのに、これ下手すりゃ、1時間近くかかるかもよ…」
《間もなく左カーブです》
「(保坂さん)佐藤さんもこのナビ、当てになんないって言ってましたしね…」
「(僕)マジですか…」
《この先、1キロ先を…》「(僕)ここまで来といてなんですが………裏切りません?ナビ?」
「(保坂さん)頼りますか…野生の勘を…」
「(僕)人間は文明に頼りすぎた…ていうか…ここどこよ?」
「(保坂さん)地図見たらもう目的地過ぎてますよぉ…どうすんのよ………」
《目的地周辺です。音声案内を終了いたします》
「(保坂さん、僕)おいっっ!!」

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