都内郊外。『天魔さん〜』の撮影は続く。
「(川口春奈ちゃん)おはようございます。プリンス。」
「(僕)はい。おはよう。」
もうすっかりプリンスの名は定着したようだ。あくまで剛君と春奈ちゃんの間でだが。
しかし、外のロケというのは大変である。この時期は虫にも随分悩まされる。剛君は美味しい血を持っているのか腕を何ヵ所も蚊に刺され、ウナコーワやムヒが欠かせない。
「(僕)今に相葉君より剛君の方がムヒ、似合っちゃうようになるんじゃないんですか?」
「(剛君)ほんまですねぇ(笑)」
外の撮影というのはいろいろと障害が多い。スタジオと違って一般の生活音も入る為、撮影がスムーズに行われない事もしばしば。
「(助監督さん)はい!シーン2カット3!よーい…」
《ブロロロロー》
「(録音部さん)カットカット。トラックの音。」
皆でトラックや自動車が通りすぎるのを待つ。
「(助監督さん)はい!お待たせしました。シーン2カット3、よーい…」
《キーン》
「(録音部さん)カットカット。飛行機。」
皆で飛行機が通りすぎるのを待つ。
「(助監督さん)はい!大変お待たせしました。シーン2カット3、よーい…」
《ミーンミンミンミンミン》
「(録音部さん)カットカット。セミがうるさい。」
遠くで鳴いてる分には問題ないらしいのだが、撮影の直前、急に近くで泣き出したセミをスタッフさん達が追っ払う。
そんな中、奇跡的(?)とも言えるような静かな一瞬の訪れが来ると…
「(スタッフさん)今がチャンスです!今です!今!今、撮っちゃいましょう!」
となる。こうなるとたった一言の何でもないセリフですら何だか俄然、緊張してくる!
「(監督)……カットぉ!」
なんとか静かな合間を縫って、シーン撮影は終了。出演者は一様にホッ。安堵に包まれる。はい!そして剛君、どさくさに紛れて『パープルレイン』歌わないでぇ。
「(助監督さん)あのぉ…すいません…」
「(出演者一同)はい?」
「(助監督さん)今、画像チェックしましたら…」
「(出演者一同)はいはい…」
「(助監督さん)飛んでる虫が画の中に入ってたのでもう一度、お願い出来ますか?」
「(出演者一同)………」
「(助監督さん)すいません…」
「(出演者一同)虫が…?」
虫ーっ!虫!頼むぜ!邪魔しないでくれよぉー!本当に…ねぇ、剛君
「♪むらさきあめ〜むらさきあめ〜♪」
剛君。日本語に直訳して『パープルレイン』を歌うの……やめて。

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