「どうぞ膝をくずして楽な姿勢になさってください。」
一番偉いお坊さんが祈祷をお願いした皆にこう告げる。祈祷の終わったこのタイミングで正座からあぐらに移行する人は多い。金子君は祈祷の途中で我慢出来なくなったのか膝をくずし、野村君に至っては腰が痛いのか最初っからあぐらである。むしろあぐらの方が腰には悪いだろうに可笑しな男だ。太田さんに至っては読経中、既にコックリコックリと揺れている…。
ブラボーカンパニーメンバーはほとんどが足をくずした。僕と保坂さん以外は。僕は隣の保坂さんを意識してムキになり膝をくずさぬ。
「(和尚さん)えー、応仁の乱の時代におりました坊さんに、一休宗純というお坊さんがおりまして…」
一休さんだ!!僕は肘で横の保坂さんをつつく。
「(和尚さん)えー、年末年始に一休さんは杖にですね…しゃれこうべ(人の頭蓋骨)をのせて京都の町を歩いたそうでして…町の人が『一休さん!なんでこのめでたい正月にそんな縁起の悪い物を持ち歩くのか?』と問うたそうです。そうすると一休さん、『何が縁起が悪いものか、このしゃれこうべは目がくぼんでいる、つまり【め(目)でたい】ではないか!』と言ったそうでして、えー、また…その昔は誕生日にかかわらずお正月が来たらみんな、一つ歳をとる数え歳でしたから、『正月が来たからと言って浮かれる事なかれ。一つ歳をとったという事はまた一つ死に近づいたという事である。皆様、ご用心!ご用心!』と言いながら京の町を歩いたそうであります。その事は…」
〜帰り道〜
「(僕)僕らの知ってるエロ一休の話は出なかったね…」
「(保坂さん)当たり前でしょっ!あと、一休さんの話出た時に肘で僕をつつくの、やめて下さい。」
明日から稽古。僕が連休さんでいられるのは今日までか。

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