すっかり春めいた週末、日曜日。僕は砧公園に出かける。暖かくなり桜も随分咲きだした。ついこの前まで支配していた『別れの季節』はあと数日後には『出会いの季節』となるでしょう!
いつものようにセリフをブツブツ言いながら内周を一周ウォーキング。その後、公園内に入ると人だかりが出来ている。
大道芸、いわゆるストリートパフォーマンスである。ヨーヨーメインのパフォーマンス。思わず僕は見いる。
知らない人達を前にワイヤレスマイクでトークを繰り広げながら神業のようなヨーヨーテクニックをたった1人で披露するプレイヤー。僕は沢山の人だかりにまぎれながら、その彼が背負う緊張や勇気、その技術に至るまでの気の遠くなるような稽古やトレーニングを想像する。僕なんか緊張すると、ほんの首の振り向きひとつ、セリフひとつすら上手く出来なくなる時すらあるのに、あんな微妙なバランスのパフォーマンスを人前で失敗もせず出来るようになるにはどれほど彼は稽古したのだろう?そしてくじける事なく頑張り続けるその原動力、彼を突き動かし続けるものとは…。
パフォーマンス終了後、彼が提げてる黒い布袋に1000円札を押し込む。
少し園内を歩いて、いつも声出しをしてる場所に行く。今日は日曜日という事で花見客で公園内は人が沢山だ。
やろうか…でも恥ずかしい…でもやろうか…いや!やっぱり恥ずかしいよ…。恥ずかしさに負けて砧公園を出ようとする。踏みとどまる。もう一度、公園内に戻る。花見客や子ども達が沢山通る中、勇気を出して声をだす!
「(僕)えー、男の道楽って言いますと、『飲む・打つ・買う』という事になっておりますが…」
園内を通りすぎる沢山の人達の視線の中、僕は覚えたての落語『明烏(あけからす)』を45分間喋り続ける。

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