「(僕)ん?進藤さん、どうしたのよ?」
「(進藤さん)あぁ…鎌倉さん…いやね、これ…どう思う?」
進藤さんが指し示したのは緑の紙パックでお馴染みの某有名緑茶。差し入れという事で1人1パックずつある。
「これさ…」
進藤さんが指し示しているのはその紙パックの横に記されている俳句である。そこには『高校生の部大賞』と冠された俳句が載っている。
《高校生の部大賞》【教頭がスルメを1枚買っていた】
「(僕)こ…これは…」
「(進藤さん)そうなのよ。」
「(僕)分からない。」
「(進藤さん)でしょ?この句が何故、大賞なのか分からないでしょ?」
「(僕)確かに。」
「(進藤さん)季語も見当たらないし、スルメって季語?」
「(僕)いや、僕も分からないっすねぇ。これ、古典の先生が怒る、典型的な学生のふざけ唄ですよね?」
「(進藤さん)ちなみに鎌倉さんのは、どんな句なのよ?」
「(僕)僕のは…中学生の部、大賞らしいよ。【三日月を背もたれにして魚釣り】」
「(進藤さん)いいじゃん。そうあるべきだよね!なんかちょっと趣(おもむき)あるじゃん!」
「(僕)中学生がこのクオリティなのに高校生大賞が…」
「(進藤さん)【教頭がスルメを1枚買っていた】」
「(僕)………。」
「(進藤さん)とりようによっては普通の文だぜ。」
「(僕)そうだよね。まだ【スルメ買う教頭先生…】とかいう始まりだったら俳句っぽいけど…」
「(進藤さん)教頭がスルメを1枚買っていた」
「(僕)……………」
「(進藤さん)これ、なんか俺ら大事なものを見落としてるだけかなぁ。それともこの選考会の審査員が全国から集まった凝った俳句を読みすぎて感覚おかしくなっちゃったのかなぁ…。」
「(僕)でも中学生の部はちゃんとした俳句が大賞だしね………は!ということはですよ!警部!中学生の部と高校生の部は審査員が違う、ということですかっ!?」
「(進藤さん)うん。ちなみにオレ、警部じゃないけどな。」
「(僕)目暮!大変です!お茶場の机にある他のお茶の句もほぼ全部【教頭がスルメを1枚買っていた】です!」
「(進藤さん)うん。ちなみにオレ、目暮でもないけどな。」


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