ホテルの部屋の中。お茶菓子四枚。ティーバッグ四つ。珍しく四人部屋。
今日はホテルの話など。ここ島原で公演の時、いつも泊まるのが『南風楼(なんぷうろう)』。ここは歴史も古く皇族の方も泊まられたという老舗のホテルです。
ところが最近、経営者が変わったらしく、行く度にアミューズメント施設が増えているのです。何年か前までは何のへんてつもない、ロビーであり、中庭だったのですが、6〜7年くらい前から中庭に羊や山羊を放すようになり、ロビーにもマンガを置くようになり、子ども達が遊ぶキッズコーナーも出来るようになり、気がつけば館内にはスポーツジムもあり…
そして今回はその中庭に木が植えられ、プールが出来、中庭で遊べるようにラケット、グローブ、なわとび、フラフープが用意され、そんな中庭をウサギが放し飼いされている。エサの葉っぱもあり、ヤギやウサギにエサやりも自由である。それからこの中庭で宝探しも出来るそうで。そして夜には…
ロビーに卓球台や射的が設置され、僕らお父さん世代にはファミコンが用意され、ホテル従業員の方々はウサギや犬の着ぐるみを着て、鐘をならしたり盛り上げている。勿論、この着ぐるみも自由に着ても良い訳で。そんなロビーには無料のカフェバーの他に時間帯は限られているがアイスクリームバーもある、ふと中庭に目をやるとライトアップもされており…と、とにかくサービスが凄いというか…。
ふと想像するのである。100年以上の由緒正しいホテルである。この方向転換に異を唱えた従業員もいたでしょう。伝統を重んじようとした従業員もいたでしょう。やってみたものの上手くいかなかった企画もあるでしょう。でも僕には『今まで通りではなく、もっとお客さんが来るようにするには…』と努力しようという気持ちが見えてなんだか涙ぐましく感じるのです。
お風呂に行きます。有明海が一望できる露天風呂があります。室外の露天風呂に出てみると、そこにもカフェバーが…。
サービスするなぁ!
部屋に戻ります。あれ……。
「ちょっと!進藤さん!」
「(進藤さん)何ですか?」
「昨日、夜遅くて誰も手をつけなかった茶菓子とお茶が!」
「(進藤さん)どうしました?」
「更に今日の分も追加されて八枚八バッグのタワーになってます!!」
「(進藤さん)マジですか!?」
「サービスするなぁ…。」


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