「(早知子さん)てか、太郎ーっっ!」
「(僕)えー!まだ引っ張ってんの!?この墓前会話。」
「(早知子さん)あんた、このままやったら私のキャラ、誤解されるやないかい!私、和田アッコさんみたいなってるやないかいっ!私は大人しく耐え忍ぶ女やったやろ?読んでる人、誤解するやろ!」
「(僕)そうですね…。和田アッコさんを例えに出した時点で読者は早知子さんを和田アッコさんのイメージで読みますしねぇ。」
「(早知子さん)イメージ回復せんかい!私のええエピソード言わんかいっ!でないと成仏出来へんわ!」
「(僕)いや、成仏は36年前に…」
「(早知子さん)あんたのおじいちゃん、おばあちゃんから聞いてるやろ?私のエピソード!」
「(僕)はい……。」
「(早知子さん)それ言いなさい。はよ言わんかぃっ!」
「(僕)はい。お母さんは勉強が好きで好きで、じいちゃんばあちゃんは1度もお母さんに『勉強しろ』なんて言った事はなかった、と言ってました。」
「(早知子さん)せやな。」
「(僕)お母さんがあまりにも勉強するから、じいちゃんが『あんまり勉強するようやったら、教科書もノートも隠して勉強出来んようにするぞ!』って不条理な意味の分からない怒り方をした、とばあちゃんが言ってました。」
「(早知子さん)あれはいまだに意味分からんわ。どんだけシュールな親やねん。」
「(僕)朝、学校に当校したものの、朝早く行き過ぎて校門が開いてなかった、ってばあちゃんが言ってました。」
「(早知子さん)それもいまだに意味分からんわ。どんだけシュールな門やねん。」
「(僕)いやむしろシュールなのはお母さ…」
「(早知子さん)はい!次!」
「(僕)授業参観日に、周りの子ども達が親の前でいいとこ見せようと元気に手を上げて発表してる中、お母さんは1度も手を上げず発表もしなかったんで、帰宅後、ばあちゃんが『早知子、なんで手も上げず、発表もせんかったの?問題、1問も分からんかったの?』って聞いたら『答え全部分かってたけど、なんかこれみよがしに皆の前で発表するのは好きじゃないから』ってさらりと言ってたって。」
「(早知子さん)あたしって謙虚やなぁ。」
「(僕)いやある意味、いやらし…」
「(早知子さん)ええで!太郎!ええで!成仏出来そうや!」
「(僕)僕が母さんと同じ旭東【あさひひがし】小学校に入学した時、昔、母さんを受け持ってた先生が出世して校長先生になってて、校長先生みずから、『君か!早知子君の息子さんというのは!君のお母さんはノートもキレイで勉強もよく出来た子やった!君もお母さんに負けないよう頑張りなさいよ!』と1年生なのに校長先生にプレッシャーかけられました。」
「(早知子さん)せや!もう一息や!昇天してきたで!」
「(僕)母さんが高校進学の時、その学力をかわれて、先生が県内1の進学校をすすめたけど、『その高校はいかにも私、頭いいでしょって言ってるみたいでイヤ!』と言ってめっちゃ普通の高校に入ったって聞きました。」
「(早知子さん)やっぱ私、謙虚やわぁ!!」
「(僕)いやお母さん!それも逆にいやらし…」
「(早知子さん)太郎!めっちゃええ感じや!はよ次のエピソードや!間もなくダウンロード完了や!!」
「(僕)え?成仏ってダウンロードなの!?」
《♪私のお墓のま〜えで〜♪》(ダウンロード30%)
「(僕)母さんが中学生の時、鉄棒ぶら下がり大会で…」
《♪泣かないでください〜♪》(ダウンロード50%完了)
「(僕)クラスの女の子達が1人、また1人と鉄棒から手を離していく中…」
《♪千のか〜ぜ〜に〜♪》(ダウンロード70%完了)
「(僕)お母さんは最後の1人になるまで鉄棒にぶら下がり続け…」
《♪千のか〜ぜにのぉ〜って〜♪》(ダウンロード80%完了)
「(僕)その頑張りにやがてクラスの女子全員から『早知子さん!頑張れー!早知子さん!頑張れー!』とコールが起こった!!と!聞いてますっっ!!」
《♪あの大きなそ〜らを〜吹きわたあっています〜》(ダウンロード100%成仏完了!)
「(早知子さん)ありがとう。太郎!これでまたお空に戻れるわ!でもお母さん、映画『銀魂2』の三浦春馬君の後ろで『ひーじかたあぁぁぁっっ!!』って言ってた野村君の芝居……どうかと思うでぇぇ……。」
「(僕)母さん!それはぁぁ!」
「はっっっ!夢か………」


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