役者をやってる人間にとって『ウケ』は大問題である。ウケてるという事は客に受け入れられた事を実感する瞬間であるし、自分の技術やセンスが評価された瞬間の様な気もする。
しかし、必ずしもお客の笑い声が起こらないからといってウケてない訳ではないらしい。笑いは起こらなくとも、じっと集中して芝居を観てくれてる場合もあるのだ。これもひとつの『静のウケ』かもしれぬ。
しかし、この『静のウケ』というやつ、舞台上で緊張の中、演技している役者にはなかなか伝わらぬ。だから、客席がシーンとしてると、面白く思われてないのかな?などと、僕は不安に駆られる。
微妙な違いだが、僕はウケが欲しいのではなく、ウケがないと不安なのだ。お客がウケると、嬉しくなるのではなく、ただホッとするのだ。客席のウケは舞台上の僕に心の平安をもたらす。
先日、座長にウケを狙ったセリフの言い方をするな!と言われたと書いた。それはおそらく、『鋏』、『化粧』と合わせて、二時間弱の上演時間の中でおそらく、五分少々くらいの自分の出番の中、そのたった五分の中でお客に受け入れられた実感を得るには『ウケ』をとるのが一番分かりやすい、と考えた結果であろう。しかしそれにより不純な道化芝居をしてしまっては元も子もならぬ。
今一度、演技というものを考え直す必要あり。

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