「痩せた?」
僕が10年以上言われ続けている事である。最初は少し嬉しいくらいだったのだが10年以上言われるとさすがに病気なのかな、と不安にもなる。確かに僕は顔も骨格がハッキリしているので元々痩せ顔ではあるのだが、むしろ体重は増えているのだ。いや、174cmの身長に70kgはかなり重めなのである。僕が痩せて見える女性があまり好みではないのは自分が痩せて見えるからだろう。
さて帰り道、近所のTSUTAYAに寄ってみる。何か観ようかしら。
“ドスっ”
ビデオ棚を見てる僕の後ろからお尻に膝蹴りがはいる。
「何?誰?」
振り向く。知らない小柄な青年が一人…
「あ!すいません!人違いでした!すいません!」
ばつが悪そうにすぐさまその場を立ち去る青年!!一瞬の呆気にとられた後に込み上げるえもいわれぬささやかな可笑しさ!後ろからお尻に膝蹴りを入れるくらいである。おそらく彼にとってかなり親しい間柄の人間と間違った事は確かであろう。
人違いは恥ずかしいもの。ポンと肩叩いたり、呼びかけて間違っただけでもかなり恥ずかしいのだ。膝蹴りまでいれて間違った彼の戸惑いの顔は少々可愛らしげにも見えた。

0