久々に劇場へ、アニメを観に行った。
しかし、雨の平日、昼の回とはいえ、席はガラガラ。観客数はやっと二桁?、もしかして一桁?。時間の都合で、観たのは2Dデジタル版でした。
サイボーグ009の世界観を観る前に理解していないと、内容が見えて来ない展開だ。その上ラストが、ある意味「尻切れトンボ」でしたので…。これは、観る人を選ぶアニメという感じ。
それと、時事的にも問題ありそうな感じ。いきなり冒頭で上海の実在の高層ビル群を薙ぎ倒すシーンは、採り方によっては反中国とも誤解されそう。また合衆国の実在する情報機関や議会、最後には大統領(明らかにオバマ大統領がモデル)までもが、人類を見捨てる描写は、どこぞのアニメイズム作品並に反米的。と言うか、本作ではテロを自作自演する完全な「悪」として、NSAが描かれている。そこら辺も、一般視聴者には不快感を持たれそうな要素だね(大統領選の時期でもあることだしね)。
自分は原作と、かれこれ40年近いお付き合いなので、元来の原作が持つ「反権力」姿勢には馴染んでいたので、そこは自然と受け止められた。どちらかと言えば、
ジェット(
002)が米政府の職員で陰謀の隠蔽に加担したり、生粋の愛国者の様な描かれ方をしてたのが、不思議。元々
ジェットは、アメリカン・ドリームの負の部分を背負ったキャラなのよね。
ジョー(
009)が成長しない体からくるストレスを、記憶のリセットで解消する「記憶喪失」設定と相まって、原作ファンには馴染みのない新設定。
斯様に、古くからのファンにも、新しく本作に接する新ファン層候補にも、どちらにも一寸高めのハードルがある印象。
それ以上に気になったのが、画面演出。
ともかく、アニメを長く観て来た人は、何処かで観た様なシーンが続々と続くのよね。
冒頭の上海シーンは、
R.O.D THE TVの香港崩壊のVer.アップ?。また、その冒頭でも朗読される「謎の詩編」は
機動警察パトレイバー/劇場版第1作。六本木ヒルズへの巡航ミサイル攻撃は、
機動警察パトレイバー2 the Movie。その後、
フランソワーズ(
003)が
少佐まがいにパラシュートなしでダイブする姿やベット型インターフェース・ターミナルは
GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊。少女の姿をした神か天使?が出てきた時は、思わず
イノセンスや
アヴァロン。ここまでは、
神山監督作なのに
押井ワールドの世界観&既視感がバリバリ。
その後は、それだけでは飽き足らず、
ギルモア財団本部襲撃戦は
新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君になみの残虐殺戮シーン。そしてオーラスは、
2001年宇宙の旅?、というか
J.P.ホーガンの世界で〆ました。音楽が
川井憲治氏である事も相まって、どうして
押井監督の他作を想起せずにはおられませんでした。
そういう感じで、全般に
押井作品へのオマージュ色の強いアニメ映画でしたが…。結局、最後には
ジョーの心の叫びが「神様」に届いて現人類は救われちゃった様で、そこは
押井監督諸作とは丸っきり逆でした。これは、
神山監督は
押井監督の後を継がないって、メッセージか?。それが「
終らせなければ、始まらない。」って事?。
そのような癖のある感覚に慣れれば、概ね面白い劇場アニメでした。
特に感心したのは、
ジョーと
フランソワーズの濡れ場=機内エロ・シーン。原作の設定では、「その後」世界で、この二人の間には子供が出来。更に、その子孫が未来人として登場する話もあるので、ラストの大盛り上がりシーンでの
ジョーの死を暗示するべく、この情事シーンが伏線(この時のセッスクで
フランソワーズが妊娠する可能性)になっていたのは、
サイボーグ009世界を知ってるファンにとっては、上手く騙された見事な演出技巧でした。
http://009.ph9.jp/

0