1900 今日の誓子全集 四童 Mail URL 2004/10/23 01:23
『炎昼』を読了し『七曜』の途中まで進みました。『炎昼』は恐ろしく創作意
欲の漲った感動的な句集です。
序文で秋桜子が「二三年乃至五六年間の業績をまとめた一家の集には、歌集で
も句集でも、たいてい山のあるものである。言ひ換へれば作者の脂が乗つて力か
ぎりの大きな仕事をしてゐる処があるものである。」(中略)「今までの句集が
歌集に比して、一割も二割も地味であつたのは、句が季題別に配列され、わざわ
ざ山が眼につかぬやうにしてあつた為であらうと考へられる。それが近頃になつ
て年代順に配列する傾向になり、同じ詩因によつて詠まれた句は、これを纏める
やうになつたので、すぐれた一連の作は立派な山として眼に立ち、従つて句集は、
派手になつて来たのである。かういふ方面から見れば、連作が俳句の位置を高め
た功績は大いに認められてよいと思ふ。」ということを書いているのですが、
『炎昼』は行けども行けども山です。
全編連作また連作で圧倒されます。シングルカットされたヒット曲のように有
名な「ピストルがプールの硬き面にひびき」や「夏の河赤き鉄鎖のはし浸る」も、
それぞれ実は別々の連作の一部であることを正しく知っている人が今日どれほど
いるのでしょうか。また原型の連作に接することのできる文献がどれほど普通に
出回っているのでしょうか。『季題別山口誓子全句集』など、まったく本末転倒
な出版物さえ存在します(存在意義はそれなりにあるのですが…)。
秋桜子も触れている「大阿蘇行」がピークだと思いますが、どの連作も味わい
があります。例えばこんな連作はどうでしょう。
航行
船厨(せんちゆう)の蠅青潮に向きて去る
船欄は蠅ををらしめ浪を白(しら)め
夏の夕餐(ゆふげ)船は蛇輪(だりん)をまはすなる
顔こすり睡(ねむ)がる子よ夏の海暮るる
夏の夜の星ひとつ撰(え)りて船にかかぐ
船に垂れ晩夏星座のみづみづしさ
夏のあさ薄翅蟲類船とすすむ
一体誓子以外の誰が「航行」という題で蠅だの薄翅蟲類だのを詠むことを想像
できましょう。「船欄は蠅ををらしめ浪を白(しら)め」の独特の把握も恐るべ
きものがあります。森羅万象みなこんな風に連作になってしまっていたのです。
『炎昼』の時期には。
1899 クラシック音楽歌仙・濁り酒の巻 初折裏 東人 2004/10/23 01:07
濁り酒二十世紀のソナタかな 守 ブーレーズ「ソナタ第2番」
虫も驚く夜の音響 四童 マウリツィオ・ポリーニ
月光の降るたび水の戯れて あめを ドビュッシー「月の光」ラヴェル「水の戯れ」
バックハウスの齧る黒パン 東人 ウィルヘルム・バックハウス
書き分けるフランスとイギリスの味 童 バッハ「フランス組曲」「イギリス組曲」
ハンガリア産ワインに合はせ 守 バルトーク「3つのハンガリー民謡」
外套の巨人の背の遠ざかる 人
四童さん、どーぞ。
守さん、はじめまして。話したことないですよね〜。長旅よろしく。
朝比古さん、「靴墨」拝見しましたよ。
1898 選句です 東人 2004/10/23 00:42
○朝冷の犬歯のあたりよく磨く
半分仕事のことを考えながら、つい犬歯を。
○贋作のコルト鮮麗いわし雲
おもちゃの拳銃でしょうが、子供にとっては鮮麗。
○地芝居の悲鳴練習してゐたる
田舎芝居がかかっているのか、のどかです。
、
○爽波忌の珈琲の泡盛り上る
爽波が「湯呑」なら、作者は「エスプレッソ」かと。
○晩秋に浮ぶ故郷の粉石鹸
晩秋の粉石けんは、なかなか溶けない。懐古句ですね。
1897 爽波忌句会選句です。 振り子 Mail 2004/10/23 00:40
○贋作のヴィトンのかばん積む良夜
贋物といえどもうず高く積まれたならばガゼン美しい景色に見えます。
○調布市の屋根屋根屋根やけふの月
固有名詞が利いているんですね。中七のリフレインも。
○地芝居の悲鳴練習してゐたる
なんか迫力が今ひとつ、っていう感じの「時芝居の悲鳴」。
滑稽な切り口です。
○爽波忌のやや梁浮かぶクロスかな
梁は稜ではないかな。そう解釈して戴きました。爽波と布の稜線。椅子にもたれ視線を低くして見た、いえ気付いたこの按排はいいです。
慌しい出勤前には気付くことはなかったテーブルクロスの折山が、うっすら影をつくる日曜日の午後。ああそういえば爽波句会の〆切りは明日だったぁ。。。例えばですが、そんな。
○腰痛が渤海湾を過ぐる秋
からだの痛みも寒気団が持ってくるのですよね。渤海湾が絶妙。
ここお久しぶりです。愉しませていただきました。
四堂喫茶店忌日句会、ずーっと続けると面白いですねえ。
名物になりそう。
1895 守さん、ども 四童 Mail URL 2004/10/23 00:11
「秋以外の有季でお願い致します」と言っているのに。ぶつぶつ…。
そのまま行きます。守さんだったら、これはブラームスの『ハンガリー舞曲』
とかでなくてバルトークの『3つのハンガリー民謡』だったりするのでしょう。
右側に適当に出典を書くことにします。
濁り酒二十世紀のソナタかな 守 ブーレーズ「ソナタ第2番」
虫も驚く夜の音響 四童 マウリツィオ・ポリーニ
月光の降るたび水の戯れて あめを ドビュッシー「月の光」ラヴェル「水の戯れ」
バックハウスの齧る黒パン 東人 ウィルヘルム・バックハウス
書き分けるフランスとイギリスの味 童 バッハ「フランス組曲」「イギリス組曲」
ハンガリア産ワインに合はせ 守 バルトーク「3つのハンガリー民謡」
次は東人さん。今度こそ秋以外の有季でお願い致します。
1894 朝比古さん、お久しぶり 四童 Mail URL 2004/10/22 23:56
もしよろしかったら普通の渋い連句を巻きませんか。気が向いたら発句をお願
いします。
1893 選句です 四童 Mail URL 2004/10/22 23:48
○良夜なり犬の尿意と我れのそれ
「犬の尿意」なんてフレーズが浮かぶこと自体すごいですね。電信柱ごとにや
はり催すのでしょうね、あれは。
○調布市の屋根屋根屋根やけふの月
戸建て密集感がありますね。地名の斡旋がよいのか。「狛江市の」とか「町田
市の」とか置き換えてみても「調布市の」ほど決まらないのはなぜだろう。
○腰痛が渤海湾を過ぐる秋
腰痛もシベリア寒気団のように北からやってくるのかも知れません。
○爽波忌の珈琲の泡盛り上る
これはエスプレッソではなくて、ドリップ式で湯を注ぐところだと思うなあ。
当店への挨拶句と読みました。ありがとうございます。
○晩秋に浮ぶ故郷の粉石鹸
この故郷は眼前のものではなく、遠い記憶なのだと読みました。
1892 爽波忌句会選句です 朝比古 2004/10/22 19:26
○贋作のヴィトンのかばん積む良夜
最近都内の秘密工場が発見されたことに触発されての作品と思うが、なにやら捨て難い風趣あり。
○屋根裏にひしめく車輪いとどの夜
屋根裏の車輪・・・。なにやらシュールな恐さ。
○調布市の屋根屋根屋根やけふの月
京王線沿線住人としては見逃せない一句。住宅街増殖中といった風情が調布市に相応しい。
○サフランの収穫祭に天使あり
サフランの収穫祭って、なんか瀟洒でイイ。天使ありは演出過剰気味か。
○晩秋に浮ぶ故郷の粉石鹸
粉石鹸って確かに郷愁感あり。韻文のよろしさを活かしている句。
こちらにお邪魔するのはかなり久し振りのような気がします。
1891 クラシック音楽歌仙・濁り酒の巻 6 Mori Mail 2004/10/22 10:28
濁り酒二十世紀のソナタかな 守
虫も驚く夜の音響 四童
月光の降るたび水の戯れて あめを
バックハウスの齧る黒パン 東人
書き分けるフランスとイギリスの味 童
ハンガリア産ワインに合わせ 守
イタリアへ行ってしまおうとも思ったのですが、北上してしまいました。
お捌きを

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