その4.稽古仲間
だいぶ前のある支部道場でのことです。
その日、新しく入会した人が初めての稽古に来ていました。年のころなら四十でこぼこといったところの、袴をつけた女の方です。準備運動を終えて最初の技は、正面打ち入り身投げでした。
そのニュ-フェイスの方は私の近くでどなたかと組んでいました。
私が自分の稽古で動き始めた時『あ―っ!』というような声が聞こえたのでそちらを見ると、その女の方が倒れていて、かなり痛そうに足を押さえていました。取りの人に聞いてみると、正面打ちのために最初の一歩を踏み出したとき、その足が滑って捻挫かなにかしたらしいとの事でした。そのまましばらく安静にしていましたが人の手を借りて立ち上がっても歩くことはできず、その時に組んでいた相手の人が、そのままおんぶで家まで送っていきました。
その方はそのままもう道場にはあらわあれませんでした。
まるでコントのような出来事だったので、怪我さえなければ笑って終わったのでしょうに。
何事もなく稽古を続けていて気が付いたら十年二十年と同じ道場で顔を合わせている、という人も居るのに、うまくいかない時は行かないものらしい。
このところ見学やら体験稽古に来られる方が相次いでいるようです。
こんな時だからこそ、ということですか。
人と人の関わりのでき方は、微妙なものです。

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