演武場に向かってほぼ全速で走る。
所定の位置まで行って振り返ると、まだ後のほうが演武場まで届いていない。
前の方はだいぶ座った頃に、まだうしろの4分の1ほどが位置を決められずに立っている。
確かに後ろの方は自分の位置を決めるのが難しいが…。
『座れ!!』
最初に言った言葉はこれだった。
何とか座らせて、正面とお互いの礼をし終えたころ
『どん!』
と演武開始の太鼓がなった。
いい滑り出しだ。
うまく動き出せば、子ども達は頭にも身体にも演武は充分入っている。
途中で乱れてしまうことはまず無い。
そのとき、去年演武がうまく行かなかった原因のほとんどは、これじゃないかと気が付いた。
つまり、スタ−トがうまく行かないと演武のリズムを出せないまま流れていって、乱れたまま2分過ぎてしまう。
遅れたためにあわてて自分のやる事を考えていると、指示の声は直さら聞こえない。演武の最初の、用意!と言ったときまだ礼が終わっていない子どもは、もう何をしていいか分からなくなるかもしれない。
指示の声が聞こえるかどうかは確かに大事な事だが、しっかり届かせなければいけない一番大事な指示は、スタ−トだ。
さらに、スタ−トの体制を早く作らせる事だ。
そういえば、今年は去年より入場の練習を沢山やった。
去年の入場がうまく行かなかったことを考えての事だったが、これほどの効果は予想以上だった。
演武場が中央で、まっすぐ走る事ができる位置だったことも幸いしたのだろう。
演武を2分以内に終わらせる事には、ちょっと秘密がある。
私が、いちいち『はじめ』『やめ』と声を掛けるので、それを調整する事で、必ず2分以内に終わる事は可能だ。ただ、やり終えていない子どもが多いと尻切れトンボに終わってしまうので、それを作り上げていくのが合同稽古の大きな目的のひとつなのだ。
予定していた演武のすべてが終わって、
『やめ!』
の合図で子ども達を座らせると、2〜3秒で終了の太鼓が鳴った。
子ども達も、それなりの達成感を感じてくれたと思う。
入場直前の『本番質問少年』はうまく動けただろうか。
ここまで時間的空間的制限をクリアできたら、ほんとにひとつになった動きを見てもらえるような団体演武を作り出せないものかと、ちよっと思う。
大勢が一糸乱れず動くような少年部の団体演武ができれば、革命的だ。
そんなものまだ一度も見た事がない。
ただの空想なのだろうか。
全ての大会は参加する事に意義があるのは確かだが、いい物を見てもらおうと努力をした結果少しでもそれにちかづけた時、自然にその意義が分かるのだろう。
今年の錬成大会、指導係りとしての自己採点、68点。
去年よりはだいぶいい。
この役目の任期は2年なので、これで卒業させていただく事になる。
少し小さめだけど、ある程度の満足感と結構大きな開放感。…悪くないな。

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