小3男子。
だいぶ前から、この子は稽古を楽しめているのかな、と気になっている。
無口で物静かな子だ。
挨拶はちゃんとできるが声が小さくて、どういう声なのか後で思い出せない。友達を作るのが苦手なのか、もう2年以上稽古に来ているが道場に稽古仲間という感じの友達は居ない印象だ。日曜日しか稽古に来れないので、他の子供と顔をあわせる回数は確かに少ないのだが、誰かと話しているのを見かけた記憶がない。
その子がこのところ短い期間に4度、見取り稽古をした。
腹痛2度、頭がふらふらする、昨日足を怪我した・・・、理由はちゃんと申告できる。これだけ続くと、ちょっと信憑性に疑問が出てくるが、勿論許可する。
4度目の見取りの次の日曜日、本人から、稽古を休みますという電話連絡があった。訳を聞くと、はっきりしたことは言わないがどうしても行きたくないのだという。
正直な理由申告だ、と思った。
その次の日曜日、いつものように普通に稽古に来たので帰りに呼び止めて話してみると、いつものように声は小さく言葉も少なく、なかなか会話が成立しなくて、稽古若しくは道場がいやで休んだのか、他に何かしたいことがあって休んだのか判然としない。
道場に友達が居ず孤立して居るのかと思って、話をする子は居るか聞いてみると、一人だが名前が出た。話をしているところを見た記憶はないが、道場で一人ぼっちでいるという訳でもない、という事なのだろうか。
この日てっきり『辞めます』という言葉が出るのかと思っていたので、私の気持ちはちょっと行き先を見失った感じで、本当は辞めたいと思っているなら、我慢はしなくていいんだよ、と言ったが、そういう気持ちが本人にないのなら、この先生は何を言ってるんだろう、と思っただろう。
結局この日、この子のことは何も分からずじまいだった。
これからも稽古に来るのなら、理解できるチャンスはあるだろう。
もしかすると、私はまるで見当違いのことを考えていたのだろうか。
少年部は結論を急がない、それが私の少年部運営の心構えのひとつだった事を再認識して、自分を一応納得させた。
あの子の気持ちはどこに向いているのだろう。
こんなときの自分は、なんとも頼りない。

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