『あんにょんキムチ』
松江 哲明(著)
2000年
汐文社
☆☆
在日コリアン3世の著者が映画専門学校の卒業制作として撮ったドキュメンタリー映画をノベライズしたもの。映画のテーマはずばり「自分」。この映画は国内外の映画祭で随分話題となったようだ。
著者は在日コリアンということをほとんど意識せずに育ってきた(小さい頃に一家で日本に帰化している)。これは母方の祖父の「日本で生きていくためには日本人にならなければならない」という考えによるのだろう。中高生時代、韓国や在日といったトピックを避けていた著者は、様々な学生の存在する映画専門学校では在日という属性が個性として受け容れられることに気づく。自分の中の韓国人の血に強い興味を感じるようになった著者は、卒業制作のテーマに「在日」を選び、家族に話を聞き韓国の親戚を訪ね、亡き祖父の人生を辿り始める。それは、自分自身のアイデンティティを問うということでもあった。
図書館の子供向けの本のコーナーにあった。ただし、特に子供向けに書かれた本ではない(文字がとても大きく、一見確かに子供向けの本に見えるのだが)。ページ数も少なく1時間ほどで読み終えると思う。暗く辛い話を予想すると肩透かしを喰らう。実にアッケラカンとしたもので、そこには20歳そこそこの著者の等身大の姿がある。でもやっぱり本ではなくて映画そのものを観てみたいなぁ。
本文約140ページ。

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