『「世界征服」は可能か?』
岡田 斗司夫(著)
2007年
筑摩書房
☆☆
ちくまプリマー新書061。
子供向けTVアニメなどでかつてお馴染みだった「世界征服」が現実に可能かどうかについて論じた本。タイトルを見て「こいつは面白い!」と飛びついたのだが、正直言って期待外れだった。的が絞り込めていないんじゃないか、という印象。
4章構成のうち前半の2章では、懐かしの子供向けTVアニメや特撮モノに登場する悪役を取り上げ、「世界征服」の目的や「世界の支配者」にもいろいろなタイプがあることを面白オカシク紹介する。このあたりの話は、オタキングならではの縦横無尽の軽快さを楽しめる。
第3章では、現実に世界征服を事業として着手・継続しようとすれば非常に大きな困難が予想され、経営論として事実上不可能であることを示す。この第3章にあたる内容を異常に緻密に例証するという趣旨の本だと思っていたので、案外当たり前の話で終わってしまっていて肩透かしを喰らったような印象。
ここで話がかわり(著者はテーマは一貫していると考えているようだが…)、第4章では、現代社会において「悪による世界征服」が(経営として成り立つか否かではなく)概念的に可能か?という議論を展開する。著者が本書において本当に語りたかったのは、おそらくこの部分だったのだろうと思う。ここで現代社会の本質が著者ならではの視点で鋭くえぐり出されていればナットクの1冊になっていたのだろうけれど、意外と底が浅い議論でガッカリ。かつて「BSマンガ夜話」で著者を見かけたときは面白い人だと思ったのだが、著者の現代社会のとらえ方は意外と皮相的・一面的なものに思えた。
全体として、非常に中途半端な印象。真面目ぶって見せている不謹慎な本なのだとしても、不謹慎ぶって見せている真面目な本なのだとしても、その徹底が甘いのだと思う。
本文175ページ程度。

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