「『終わりのない仕事』(徳田雄洋(著)・村井宗二(絵))」
コンピュータ・インターネット
『終わりのない仕事』
徳田 雄洋(著)
村井 宗二(絵)
1990年
岩波書店
☆☆☆
「はじめて出会うコンピュータ科学」シリーズの第7巻(「ネットワーク編」とされている)。英題は"My First Adventures in Computer Science, Vol. 7: A Never-Ending Job."
コンピュータ・サイエンスの基礎を題材とする子供向け絵本シリーズ中の1冊。小学生の兄妹ター君とアキちゃん、博識なナオキおじさん(久し振りに前半1/3にだけ登場)による会話を軸に進行していく。巻末に「大人のためのあとがき」(2ページ)あり。
本書で取り上げられている主なトピックは、(コンピュータ・ネットワークに限らない)ネットワークの種類とトポロジー、メッセージ伝達に関わる種々の問題、メッセージの終了判定とプロトコル、といったところ。もう少しインターネットに特化した内容かと思っていたが違った(考えてみれば、本書が刊行された1990年はまだインターネットの商業利用が解禁される前で、インターネットはそれほど一般的なものではなかった)。
本シリーズの読後に感じる独特の余韻が何に由来するものなのかを考えてみると、(本質的・原理的に)難しい問題を難しい問題としてそのまま提示しているせいなのかなと思う。本シリーズでは、ヤッカイな問題を解く完璧な方法など出てこないし、いくつかの問題に関しては答えが出ぬまま終わってしまう。そういう意味では、本シリーズはコンピュータ科学が種々の問題を「いかに解いているのか」を扱ったものではなく、「どんな問題を解いているのか」を扱ったものと言えるのかもしれない。本シリーズの1冊1冊を読んでいてどんどん連想がつながっていったり、読後にまで問題に想いを馳せてしまうのはそのせいなのだろうと思う。
「はじめて出会うコンピュータ科学」シリーズとして他に、
ハードウェア編、
自然言語編、
情報構造編、
コンパイラ編、
図形処理編、
アルゴリズム編、
オペレーティングシステム編が刊行されている。
本文60ページ程度。

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