「『こんなふうに教わりたかった! 中学数学教室』(定松勝幸)」
数学・統計学
『こんなふうに教わりたかった! 中学数学教室』
定松 勝幸(著)
2014年
SBクリエイティブ
☆☆☆
ソフトバンク新書の「250」。「大人のための数学再入門」的な、ユルくて笑える数学教室。小林吹代氏の書く本と似た雰囲気(例えば、『
見えてくる数学』(2007年 すばる舎))。現役の中学生や受験生よりも社会人の方が楽しめると思う。
面白い! 中学数学に出てくる概念を著者オリジナルの理屈で説明していくような本かと思ったら、全然違った。このテの「やり直し数学」の本は、大人が読んで「あぁ、そういうことだったのか!」と思えるかどうかがキモ(そういう意味では、本当は「マイナスかけるマイナスは何故プラスになるのか」なんかが題材としてはちょうどいいのだが…)。本書では、(特に難易度の高いワケではない)中学数学の典型的な問題を取り上げ、その代表的な解法の背後にある問題の捉え方や、解法に辿り着くまでの頭の働かせ方、ちょっとした意識のもち方について解説している。「数学をどう教えるか」という点でも参考になる。
お題は、平行線の性質、三角形の面積比、文字を含む式、因数分解、方程式、関数、連立方程式、確率、の8つ。それぞれよく見かける典型的な問題を取り上げ、どうやってその問題を解くか、ユル〜く語って聞かせる。文章は完全な口語体、各章20ページもない新書サイズの本で、しかも図も多いため、スイスイ読み進んでいける。しか〜し! このテの本はサラッと読まずに、ちゃんと考えながら読むことが重要。問題が出題されたらページをめくる手を止めて、まず自分で答えを考えてみるべきだろう(そうしてみると、出題の順序に工夫が凝らされていることが実感できる)。各章末に1題ずつ出題されている「チャレンジ問題」ももちろん全問解いてみるべき(解答・解説は巻末にまとめられている)。
ただちょっと…、楽しく読ませてもらったが、網羅的な内容ではないため正直ややモノ足りなくも思う。このコンセプトであれば、是非続編を出して欲しいところ(あるいは、小学校算数の内容から網羅的にやるか)。また、この著者が(「解法」についてではなく)「数学概念」について語るとしたらどんなふうに語るのか是非聞いてみたいと思う。
ところで、このタイトルは著者の意向によるものなのだろうか? それとも、編集者が勝手につけてしまったものなのだろうか? 後者だとしたら、タイトルに過剰反応してもあまり意味がない(「この内容を45〜50分の授業でどう教えるんだ」とか、「高校数学の内容が含まれているじゃないか」とか)。
ちなみに、「おわりに」を読むと、著者は極度の筆無精だそうで。奥付に「執筆協力者 定松直子」とあるように、実際の執筆は奥さんが行ったものなのかもしれない。
本文150ページ程度(他に、「チャレンジ問題」の解答・解説として20ページ程度)。

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