『知能の謎――認知発達ロボティクスの挑戦――』
けいはんな社会的知能発生学研究会(編)
2004年
講談社
☆☆☆☆
講談社ブルーバックスB1461。
面白い。もっと早く読めばよかった。副題にある「認知発達ロボティクス」とは、知能をもつロボットを実際につくってみることを通して、人間のもっているような知能(知能そのものや、その構造、知能発達の仕組み、発達過程)を解明することを目指す、人工知能・ロボット研究の新しい潮流。けいはんな社会的知能発生学研究会は、ロボット工学、人工知能研究、脳科学、認知科学、発達心理学、等の分野を越えて集まった若手研究者(30〜40代?)主体の会のようだ。
はじめに、認知発達ロボティクスという勃興期にある学問領域の基本的なアイデアについての紹介があり、その後7人の著者が単独でそれぞれ1章を担当している。著者の立場はそれぞれ異なっていて、人間の脳を理解するための手段としてロボットをつくるという立場もあれば、ロボットをつくることそのものを目的とする立場もある。
人間のような知能をもったロボットをつくるためには克服しなければならない障壁がいくつもある。わかっているのは、それがとんでもなく険しい山だということだけで、そもそもどんな障壁があるのかすらよくわかっていないのだと思う。著者らは、古典的な人工知能研究や知能ロボット研究に欠けていた(あるいは、軽視されていた)ものとして、知能における「身体」の意味、知能がどのように「発達」していくのかという観点、ロボットがその中で成長していく(あるいはロボット同士で形成する)「社会」等を挙げる。「自分の身体を使って実世界と関わり合いながら、徐々に学び、成長してゆく」そんなロボットを実現しようともがくプロセスの中から「知能の謎」を解くヒントが得られるかもしれない、というわけだ。
特に、最初の2章(「序論」と「エピソード0」)が面白い。誕生したての学問だから、具体的な研究成果ではなくて、その視点から新たに見えてくる風景の豊かさによって評価したい。
本文約260ページ。

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