『頭のいい大学四年間の生き方』
和田 秀樹(著)
2007年
中経出版
☆☆☆
「中経の文庫」の「わ-1-2」。同じ出版社から2003年に刊行された同名の単行本を再編集の上、文庫化した本。大学四年間の「過ごし方」ではなく「生き方」とタイトルにあるように、「社会人としてどう生き延びていくか」が本書のテーマ。大学生のうちに社会人として生き延びていく術を身に付けておけ、大学時代はそのための準備期間(と言うか、助走期間)なのだと心得よ、という話。
全5章構成。190ページ程度と薄い文庫本で、文字も大きめ、文章は完全なる口語体ですぐ読める。文章を読むのがもの凄く遅い僕でも数時間で読み終えることができた。ただ、テーマは1つなので、後半になるとやや冗長にも感じた。
大学四年間のうちに「生存戦略の練り方」や「独学の仕方」を学んでおけ、という内容。日本の大学は学生を一人前の社会人には育ててくれないし、移り変わりの激しい世の中で生き残っていくためには、世の中の変化を感じ取る嗅覚を頼りに自らの生存戦略を微調整し、独学し続けるしかないのだから。社会人としてタフに生き延びていけるか否かは、大学時代にこうした術を身に付けられたか否かにかかっている。ここで言う「独学」には、机に向かって行う「勉強」だけでなく、広く「社会経験」までを含んでいる。例えば、アルバイトをするにしても、単に「お金が貰えればいいや」というのではなく、「どうやって利益を出しているのか」「コストを抑えるためにどういう工夫をしているのか」「自分が経営者だったらどうするか」といった面を見よ、と。そうした意識をもつことによって、同じ経験をしていても学びの質や量がグンと上がるのだ、と。
「意欲的であれ」ということかなぁ。春に読んだ『
「大学時代」自分のために絶対やっておきたいこと』(千田(著) 2011年 三笠書房)の内容と似ている、という印象(この本は一言で言うと「貪欲であれ」という内容だった。そう言う意味では、このテの本に書いてあることなんてみんな同じなのかも)。何故「意欲的である」必要があるかと言えば、学びのスピードが違うから。人は目標や目的がないと何かから学ぶことなんてできないのだ。逆に言うと、目標や目的があればどんなことからでも何かを学んでしまう。だから、学ぶこと自体に意欲的でなくても別に構わないのだと思う。何かに対して意欲的であればそれでいい。
元が2003年に刊行された本で、文庫化されてから既に10年が経っていることもあり、取り上げられている事例などに古臭さを感じた(文庫化の際に若干アップデートされたようだが…)。著者による大学教育批判なんかは如何にも素人議論で、突っ込みどころ満載(笑)という印象。ただ、「大学に通っているだけでは『生きていく力』は身に付かない」「生き残るために常に意欲的であれ」というメッセージそのものは正しいと思うので、本当に「大人」の言う通りに素直に育ってきた「いいこ」はこういう本にも触れておいた方がいいのかもしれない。僕も大学入学時に読んでいたら「目からウロコ」だったのかもしれないな。
本文180ページ程度。

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