「『1時間走れればフルマラソンは完走できる』(鍋倉賢治)」
スポーツ
『1時間走れればフルマラソンは完走できる』
鍋倉 賢治(著)
2007年
学習研究社
☆☆
「GAKKEN SPORTS BOOKS」シリーズ中の1冊。初心者向けマラソン入門。運動習慣のない読者を対象に、週3回30分程度のウォーキング&ジョギングから始め、半年間でフルマラソン完走(4〜5時間)にまで導く。
全6章構成。イントロダクション、運動の習慣化、半年間の練習プラン、ランニングフォーム、マラソン大会当日の心得、ストレッチ・身体のケア、といった内容。図表も多く、3段組みの文章量もそれほど多くはないので、スイスイ読み進んでいける。
著者は筑波大学の先生で、著者の開講する「つくばマラソン」という授業は既に25年以上続く筑大名物(?)となっているようだ(筑波大学のシラバスを見てみたところ(笑)、今年度(平成30年度)も開講されている)。体育専攻とは限らない一般の筑大生を対象に、筑波大学も主催者に名を連ねている秋の「つくばマラソン」完走を目指す、という講義+実技形式の授業で、受講生の9割以上が見事完走を果たすのだという。この授業で得られたデータやノウハウが本書の内容にも活かされているようだ。
僕自身は、ジョギング系SNS「ジョグノート」上で2007〜2016年に連載されていたコラム『鍋倉教授の楽しく走ってステップアップ講座』で著者のことを知った(最初は助教授(准教授?)だったような気が…(笑))。各回のコラムの文章は短いのだが、普通のランナー・ジョガーが知りたいと思うような内容を学術寄りの視点からわかりやすく解説しており、コラムの内容をまとめた書籍を是非読んでみたいと思っていた。
そういう僕から見ると、本書は学術色が払拭されており、ややもの足りないのだが…。本書の「トレーニングプラン」では最初の2か月間を「週3回の運動の習慣化」に当てているくらいで、とにかく「マラソン挑戦への敷居を下げる」ことを重視しているようだ。目標も控えめに「歩かず完走」。「アスリートとしてのパフォーマンスアップ」というより、「身体の声を聴く」感性を育てていくことに主眼を置いているようだ。
ちなみに、「1時間走れればフルマラソンは完走できる」という著者の主張には僕も完全に同意する。マラソン完走は意外と簡単なのである。1時間を楽しく走り切れる人なら(最後の数kmは少しキツいかもしれないが)フルマラソンを歩かず完走することは可能。そして、「1回1時間のジョギングを週3回継続的に行う」ことができれば、数か月で「1時間を楽しく走り切れる」ようになる。「ジョギング・ウォーキング等の負荷の軽い運動の習慣化」が何よりも大切なワケで、そのために著者が採っている作戦が「とにかく敷居を下げる」ことなのだろう。騙されたと思ってウォーキングから始めてみれば、半年後にはフルマラソンを完走できるようになっているのである。そうして得られるものは何か?と言えば、それこそまさに「運動が組み込まれた生活」「いつでも走り出せる自分自身」なのだ。
本文130ページ程度。

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