「『仕事の渋滞は「心理学」で解決できる』(佐々木正悟)」
その他
『仕事の渋滞は「心理学」で解決できる』
佐々木 正悟(著)
2017年
KADOKAWA
☆☆
「ビジネス書量産ライター」みたいな著者による「仕事の渋滞」解消術。言っちゃ悪いが、A4用紙1枚にまとめられるんじゃないか、というような内容(笑)。
全6章構成。仕事の渋滞を引き起こす「先送り」の心理(第1章)、毎日のルーティンワークの仕事術(第2章)、非ルーティンワークの仕事術(第3〜5章)、書類整理術(第6章)、といった内容。余白も広く、文字も大きめ、行間も広い。本を読むのが速い人なら1時間かからずに読めてしまうのかもしれない。
読者に買わせることを最優先して作られた本、という印象。本書の書名や目次を見ていて感じるのだけど、内容を適切に反映させたらこうなった、という書名、章・節タイトルではなく、まず「売れる本」の書名と構成を考えて、それに合わせて中身を書いていったのかな?という感じがする。中盤(第3〜5章)の90ページには仕事をためがちな人にとって参考になることも書いてあると思うので、逆に勿体ない。何かを学び取るツモリで能動的に読まないと、サラッと読めてしまうけれども何も頭に残らない本、になってしまう。
タイトルから、(「心理学」というよりも)行動経済学の知見なんかを日々の仕事術として活用する、というような内容の本かな?と思っていたが、実際はかなり違った。巻末のプロフィールによると著者は「心理学ジャーナリスト」だそうで、ライフハック系の著作がたくさんあるようだ。「藁をも掴む」ような人が読む本だけど、せっかく掴んだこの藁、是非とも活かしたい。
僕なんか完全にそうなんだけど、「ちゃんとしようとすればするほどちゃんとできなくなる」んですよね。「ちゃんとする」=「明日する」(今日はできない)、なワケだから。だけどまぁ、今日ちゃんとできないものは明日だってちゃんとできるワケがない(笑)。むしろ、締め切りまでの残り時間が少なくなってしまったのだから、状況は悪くなってる。だから、「ちゃんとしよう」なんて思わない方がいい(笑)。ちゃんとしてなくてもいいから、今日少しだけでも進めておいた方がいい。だけど、「ちゃんとしなくていい」と自分を許してしまうのもまた怖ろしい(笑)。今だってちゃんとできていないのに、ますますできなくなってしまったらどうしよう、と。だけどまぁ、著者によれば、そうはならないようにするためのちょっとしたコツがあるんだよ、と。
それは僕の言葉で言い換えると、「成り行きで仕事をするな」というようなこと(ほら、心理学ほとんど関係ない(笑))。成り行き任せだと、どうしても自分の外部に起因する様々な事情に翻弄されてしまう。そうではなくて、今日何をして何をしないかは自分で管理・コントロールせよ、と。仕事の渋滞が起きるのは、たまった仕事の全体量も把握しないまま、急ぎの仕事や目についた仕事、手のつけやすいところから闇雲に始めてしまうから。メールの返信のようなその場で終わる仕事だけでなく、「ビジネス書を1冊執筆する」というような数か月に渡るプロジェクトに関しても、作業の全体を適切に「分割・配分」することと、日々の「継続の工夫」をすることで、仕事の渋滞は解消できるんだよ、と。
こういうことって、特に誰かに教えて貰わなくても、できちゃう人はできちゃうんでしょうね(学生時代から)。あるいは社会人になってから「仕事の進め方」として教わる機会もあるのかもしれません。だけど、教わったこともないし、経験から学ぶこともできなくて、(曲がりなりにも機能する)自己流の「仕事術」を編み出すこともできなかった、という人は多いんじゃないかと思います(だからこういう本が売れる余地があるワケで…)。そういう人が「仕事のできない人」なんでしょう(僕なんて典型的な…)。処方箋は意外とシンプルで、「段取り考えてからやれ」ってことなんですよね。
個人的には、「仕事の記録をちゃんと残す」ということと(「ちゃんと」と言うのは、「将来の仕事の参考にしたり、再利用できるように」ということ)、「今すぐできないことに関しては、今すぐ(時間をとってでも)なるべく詳細に計画を立てる」こと、そして立てた計画の遂行中には「常に自分自身に仕事の引き継ぎをしていく」こと、が印象に残りました。うまく「引き継ぎ」できないと、ベクトルが定まらないんだろうなぁ、きっと。
本文180ページ程度。

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