「『高校生からはじめるプログラミング』(吉村総一郎)」
コンピュータ・インターネット
『高校生からはじめるプログラミング』
吉村 総一郎(著)
2017年
KADOKAWA
☆☆
普段PCを触っていないスマホ世代の中高生を対象としたプログラミング入門。数回で終わるクライエントサイドWEBプログラミング体験教室。全ページフルカラー(笑)。開発・実行環境としては、無料でダウンロード&インストールすることの出来るMicrosoft Visual Studio Code(エディタ)と、WEBブラウザのGoogle Chromeの「デベロッパーツール」機能を使う。Windows、Mac対応。
「やってみよう!」的な内容。4章構成で、HTML(第1章約60ページ)、JavaScript(第2章約70ページ)、CSS(第3章約20ページ)の仕組みを軽く紹介した後、「診断アプリ」を作成(第4章約60ページ)して終了。厚手の紙を使っているが、ページ数自体は220ページ程度と(プログラミング関連書籍としてはかなり)少なめ。文字も大きく行間も広い(笑)ため、スイスイ読み進んでいける。「ジックリ取り組む」というタイプの本ではなく、本書全体が「新学期1回目の授業」のような内容なので、既に「プログラミングを覚えたい!」と鼻息荒くなっている意欲的な学生さんには当然もの足りないだろう。その場合、本書を数日で終わらせて(初学者の独習でも1日1章進むことは可能だろうと思う)、もっと本格的な「入門書」にサッサと進むが吉。
表紙に「N高校のプログラミング教育メソッドを大公開!」とあるが、通常の学校教科書のようなお堅い本ではない。何はともあれ、まずは生徒にプログラミングを体験させる、ということに主眼を置いたオリエンテーション的な内容で、角川ドワンゴ学園の運営する通信制高等学校「
N高等学校」でも、本書を「教科書」として用いているワケではないと思う(どうやら、3か月間の課外授業の教材の冒頭部を掻い摘んで書籍化したものが本書のようだ。「
N予備校」の有料会員(月額1000円(税抜))になれば、残りの教材を見ることが出来るだけでなく、ネット配信される生放送授業を視聴したり、WEB上のフォーラムで講師や他の受講生に質問したり出来るようだ)。私自身は習う立場ではなく教える立場で本書を手に取ってみたのだが、(第4章以外は)正直ほとんど参考にならなかった。
本書の目的は、読者にプログラミングスキルを身に付けさせることそのものにではなく、「プログラミングって誰にでも出来るものなんだ!」「アプリやサービスの裏側にある仕組みって意外と単純なものなんだ!」と実感させることにある。その点は割り切っているようで、網羅的な内容ではないことはもちろんのこと、他の入門書なら説明するようなことすら説明を省き(笑)、かなり端折り気味。「薄い内容」と言わざるを得ないが(正直言って、ここまで内容の薄いプログラミング入門は見たことがない(笑))、本書の内容は、受講生に対してその場で情報を補う講師の存在を仮定するなど、「N高等学校」「N予備校」の特長の1つである「ネットを介した双方向授業」を前提として構成されている、ということなのかもしれない(そういう意味では、「独習書」というより、やはり「授業で用いる教科書」なのか)。
ちなみに、表紙や裏表紙、各章の扉ページに人気コンテンツの『ソードアート・オンライン』のイラストが用いられているが、本書の内容とは全くの無関係(笑)。こういった見目麗しいCGを駆使したゲームを作る、という内容ではもちろんないし、RPG風に学習を進めていく、という趣旨の本でもないので、あまり表紙の印象に惑わされない方がいいと思う。単に、まずは表紙イラストで中高生のハートをつかむ、という作戦なのだろう(僕のようなオジサンのハートも射抜かれてしまいましたが(笑))。
本文215ページ程度。

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