『すきになる高校物理』
橋元 淳一郎(著)
2011年
学研教育出版
☆☆
高校生や大学生向けの物理の売れ筋参考書をたくさん書いている著者による、「高校物理」を題材とした(高校生向けの)読み物。『だれも教えてくれない 橋元先生のみんなの物理』(2001年 学研教育出版)に加筆・訂正を施しイラストを加えたもの、とのこと。表紙には「2時間で読めてマルっとわかる」との文言も。確かに「2時間で読める」かもしれないが、「マルっとわかる」かと言うと…?(笑)
全10章構成。やや厚手の紙を使っているため気付きにくいが、120ページ程度しかない。各章10ページ程度なのでサッと読めるが、少し内容が薄いような気も…。表紙カバーのイラストの雰囲気からわかるように、レベルは決して高くない(と言うか、低い!?)。
物理学はこの世の成り立ち・仕組みを「理屈」で説明しようという学問だから、いきおい「理屈っぽく」なってしまうのは必然。そこを面白がれるか否かが好き嫌いの分かれ目になってしまう。公式を丸暗記して物理嫌いになってしまったような学生さんに対して、物理の面白さ(ある物理現象を物理学ではどのように説明するのか、その物理学的理解そのもののもつ面白さ)を伝えよう!という趣旨の本のようだ。僕なりにタイトルを付け直すとすると、『すきになって! 高校物理』か(笑)。
対象としている読者のレベルがちょっとよくわからない。等速直線運動や等加速度運動について述べている最初の3章分は「易し過ぎる」くらいで(「小学校高学年なら読めるのでは!?」と感じるホド)、高校物理の最初の一歩目で躓いてしまった学生さんを相手にしている本なのだろうと思っていたが、運動方程式やエネルギーがテーマとなっている中盤の3章分を読むと、必ずしも「挫折してしまった人」向けというワケでもなさそうなことがわかってきた(「勉強はしているが、『物理の面白さ』がイマイチわからない」といった学生さん向けか)。また、終盤の「熱」「波」「電磁気」「量子論・相対論」を扱った章は、章そのものが「コラム」みたいな雰囲気があり、むしろ物理を(得意かどうかはさておき)好きな学生さんが読んで「なるほど、ニヤリ」とする内容ではないかと思う(かと言って、レベルはそれほど高くないようにも思う)。後半へ進むほど本書を楽しむために必要なレベルが上がっていくように思うので、学校の物理の勉強と併行して(自分のレベルを上げつつ)ゆっくり読み進めていくのが良いのかもしれない。
本文120ページ程度。

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