『数について』
志賀 浩二(著)
2000年
朝倉書店
☆☆☆☆
「<生涯学習>はじめからの数学」シリーズの1冊目。
内容はタイトル通り「スウについて」。四則演算が可能かどうかや、結合法則、交換法則、分配法則が成り立つかどうかを1つ1つ確認しながら、自然数、ゼロ、負の数、整数、分数、循環しない小数、循環小数、有理数、無限小数、無理数、実数、という数の概念の拡張について、じっくり述べていく。
もともとが一般向けに行われた講義をもとにしたもので、数学に馴染みのない人を飽きさせない工夫がいろいろなされている。ただし、子供だましの内容ではなく、循環小数や無理数について述べるくだりでは、素人を相手に正面から「無限」や「極限」について述べる。
数学を一から学び直したい一般の方向けと言えるだろう。説明は易しく語り口も優しいが、「無限」のような比較的高度な内容も含んでおり自分でじっくり考えることを求められる。受験や仕事に手っ取り早く役立てたい読者には不向きではないかと思う。
「はじめに」の中で述べられていた「数というものが提示するさまざまな様相の意味を探っていくと、数学の源泉から湧き上がる生命感のようなものを感じとることができます。」という言葉が強く印象に残っている。この世には「数学は無味乾燥の冷たい世界」と思う人もいれば、そこに「生命感」を感じる人もいるのだ。
各章に練習問題があり、巻末に解答が載っている。
本文約135ページ。

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