2010/5/13  22:43

【読書感想】Curse of the Blue Tattoo - Louis A Meyer  読書&アート

Curse of the Blue Tattoo: Being an Account of the Misadventures of Jacky Faber, Midshipman and Fine Lady (Amazon)

青い刺青の呪い:士官候補生にして立派なレディ、ジャッキー・ファーバーの災難の報告であります

4/2のエントリーに感想を書いた「Bloody Jack」の続編(シリーズ第二作)です。

男の子のふりをして英国海軍の軍艦ドルフィン号の「少年水兵」になった女の子の孤児、メアリー・「ジャッキー」・ファーバーのその後の冒険。舞台は1803年〜1804年、ジャッキーは14〜15歳。

この第2作は完全にボストンを舞台にしていて、まったく海には出ないのですけどね。(3巻からはまた海に戻ります。)これは、次につながる「修行編」と言っていいでしょう。

<以下、第1作「Bloody Jack」ねたばれ、第2作ちょいばれ>

前作の最後に、ジャッキーはついに女であることがバレ、艦付き教師(schoolmaster)のはからい(というか、厄介払いというか)で、なんとボストンのお嬢様学校に入学することになってしまいます。

艦付き教師というのは、士官候補生に国語・数学・一般教養を教えるために乗っているのですが(ジャック・オーブリー艦長は教師を乗せないで、自分で教えることが多かったですね)、「ドルフィン号」の教授はアメリカ人なので民主主義的で、ジャッキーたち少年水兵にも授業をしてくれていたのです。民主主義的で親切で科学精神旺盛な先生でしたが、何しろ当時のアメリカ人だけに、ガチガチのピューリタンだというところが欠点でした。

なので、この教授の知り合いが校長をやっている「ローソン・ピーボディ女子学校」というのも、もちろんガチガチのピューリタン。ピム校長(メリル・ストリープがやったらちょうどよさそうな、超おっかない女史)もガチガチだし、当時のボストン全体が、二言目には神だ罪だ地獄の業火だと、もうカタくてカタくて。まあ、こういう信心深すぎるところが嫌われて英国を追い出された人々が作った国だから、しょうがないのですけどね〜。(ちなみに、アメリカには、現在でもこの傾向はちゃんと残ってます。)

自由で楽しいこと大好きであまり信心深くないイングランド人のジャッキーが馴染めるはずもなく、港で英国人水兵相手にダンスのステップを披露していたところを逮捕されて(理由は「膝が見えたから」!)、えらいことになるのですが...

でも、ガチガチな一方でちゃんと良いところもある。ジャッキーが友人とボストンの街を歩いていて、ロンドンと違って物乞いをする孤児の姿がないこと、どんなに低い階級の人でもちゃんと読み書きができること(当時の英国では、下層階級はほとんど文盲だった)を不思議に思い、孤児は政府が保護していること、子供全員に教育を受けさせることが法律で決まっていることを聞かされて驚くシーンがあります。うむ、現在のアメリカ保守派の人々が主張していることに反して、「ファウンディング・ファーザース」が目指したのは、ちゃんと国民の面倒を見る福祉国家だったのよね〜。

閑話休題。英国海軍の士官候補生にまでなったジャッキーがお嬢様学校でレディ修行と聞くと、型にはめられ、役にも立たないことを教え込まれてうんざり、という感じを思い浮かべるのですが...意外にも、この学校で教えられることって、非常に役に立つことばかりなんですよ。特に乗馬!あとフランス語や数学や歴史はもちろん、音楽や美術や家庭科(お嬢様は家事はしないので、主に習うのは家計管理)さえも。役に立たないのは刺繍ぐらいだろうか。

さらに意外なのは、3巻で再び世の中に出て地位の高い男たちと渡り合う必要が生じたとき、この学校で教えられたことの中で一番役に立つのは「お嬢様としての気構え・態度」だったということです。なにしろ、ジャッキーがに入学して最初に教えられるのが、「ローソン・ピーボディ女子学校の生徒がいつも浮かべておくべき表情」なのですよ。鼻と顎をつんと上げ、唇は閉じ、歯は離して、目は伏せ目がちにする。「haughty」(高慢)と表現されているこの表情は「The Look」と呼ばれるのですが、要するに、「私はただの女じゃなく、レディなんだからそう扱いなさい」という表情なんですね。レディとただの女を分けるのは生まれでも金でもなく、まずはこの「根拠のないプライド」なんだなあ。ハッタリと言ってもいい。

現代なら、プライドだけ高くても実力がなければ、と考えるだろうけど、当時の女性はどうしたって力のある職業にはつけないし、そもそも法律上「自分の金を持てない」という決定的な障害があるので、本人がどんなに優秀でも「実力」を持つこと自体が難しいのだ。そこをすりぬけて、とにかく自分の力で生き残ってゆくには、まずはハッタリでもなんでも「自分は偉い」と思うこと...いや、何があっても「自分は偉い」という態度を崩さないだけの根性を身につけることなんだなあ。

あ、なんか脱線気味だし長くなったな。続きは後で。



2012/11/14  21:51

投稿者:Kumiko

Makironさん、こんにちは!
Bloody Jackシリーズ、読んでくださって嬉しいです。
面白いでしょう〜♪
「休日は一日中、仕事中は早く帰って続きを読みたい」というのは、オーブリー&マチュリンの7巻を読んでいたときの私みたいです(笑)。
本当に、世が世なら、ジャッキーは艦長や提督に出世しそうですよね。ジェイミーを部下にするかも。
(もっとも、現代ならばジャッキーは軍人より起業家とかになりそうなタイプですが。)
ほんとうに、映画だと短いし金もかかるので、「ホーンブロワー」みたいにテレビドラマで映像化してほしいと切に願っています。
3巻、4巻とますます面白くなりますので、楽しんでくださいね!

2012/11/12  19:25

投稿者:makiron

こんにちは。今、2巻を読んでいるところです。
実はマスター&コマンダーを先に読み始めたのですが、面白いけど英語が難しくてなかなか進まない時にこのブログで、Bloody Jackを知ってしまい、最近は休日は1日中読書、仕事中は、ああ早く家に帰って本を読みたい〜のBloody Jack中毒です。(マスター&コマンダーはすっかり中断、このシリーズを読み終わったら再開しようかなあなんて。)
いまだに冒険に憧れているので、ジャッキーの活躍が楽しくて楽しくて仕方がないです。失敗するけど(ああ〜ジャッキーそっち行ったらダメー!!と突っ込みながら読んでます)、友達思いで惚れっぽいジャッキー、努力家で行動力あるし、英国海軍が男女平等だったらジャック・オーブリーみたいな艦長になれているのに。絶対ジェイミーより出世が早そうだわなんて、でも女の子が制限がある社会の中で一生懸命自分の道を探して戦っているからこのシリーズがユニークなのかなんて思ったり。ジャッキー達の時代から比べると平等だけど、女子にはなにかしら薄いけど制限があってつまらないなと思っていた10代の自分に勧めたいです。 
コックニーを話すジャッキーや、演奏や踊りを見てみたいので、どこかがテレビドラマ化しないかなあ。実写はお金がかかりそうだから、アニメでも。宮崎駿のアニメの主人公でもおかしくないキャラクターだななんて考えています。
こんなに面白くて読むのが止められない小説を紹介していただいて、ありがとうございました!! 

2010/5/16  23:05

投稿者:Kumiko

裏表紙に「12歳以上向け」と書いてあるのを見ると、「上の制限は...?」とちょっと心配になってしまうのですが(笑)、大人が読んでも面白いです。でも、日本の中学〜高校ぐらいの女の子に読んでほしいですね。翻訳してほしい...

2010/5/15  21:59

投稿者:しるふぃーど

>シリーズ全体のテーマがフェミニズム
あ、そうか〜、作者の書き方が巧みなんですかね、露骨に女性の立場をどうこう言わないで、ジャッキーの行動でフェミニズムを示しているわけですね。
米アマゾンの書評で大人が書いたらしい評をたくさん見かけました。むかし冒険を夢見ていた女性向け、というような評が書いてあって、船酔い体質なのに海にあこがれる自分もこの本の読者の仲間だな〜と思いました。
翻訳されたら冒険にあこがれる日本の少女も読みますかね〜。

2010/5/15  0:15

投稿者:Kumiko

>悲嘆にくれて動けなくなってもおかしくないところでもしっかりしてます。(ところで海洋物では主人公が一度は必ず遭難しますね)

遭難している間にしっかり泳ぎをおぼえてますしね。
ジャッキーの性格を一言で表現すると、「転んでもタダでは起きない」だと思います。

2010/5/15  0:01

投稿者:Kumiko

しるふぃーどさん、こんにちは。
おお、読まれたのですね!面白かったでしょう〜
私も止まらなくなって、今4巻を読んでいます。ジャッキーは実際的なところがいいですね。どんな時でもプランを立てると安心するとか...巻を追うごとにどんどん成長してくるのも楽しいです。
うーん、私は、1巻のはじめからフェミニズムは出っぱなしだと思ってましたが。2巻は魔女狩りのモチーフもあるし...女性主人公がどう成長し、どう生きて行くかって話だから、シリーズ全体のテーマがフェミニズムだと思いますよ。いけないかしら(笑)
まあ女性の抑圧の話に限らず、1巻の孤児の状況や、3巻には英国によるアイルランド抑圧の話も出てくるし、4巻はアメリカの奴隷制の話が全開だし、そういう当時の社会の矛盾を、けっこう真っ向から批判的に描いていると思います。基本的に若い人向けの小説だからなのかな。

2010/5/14  22:36

投稿者:しるふぃーど

前回の1巻目の感想がとてもおもしろそうでしたので、GWに読みましたよ!そしてさっそく次を注文してしまいました。続きがたくさん出ているので長編好きとしてはうれしい限りです。しかも2巻から倍のページ数になっている…。長く楽しめますね〜。
ジャッキーは図らずも軍艦で男の子のふりをしているわけですけども、中身はものすごく女の子ですよね。ほかの少年たちが海賊やお宝の夢を見ているときに、商船を持つことを夢見ているような実際的な考え方は女の子ならではです。同じ年なら女の子のほうが賢いといいますが、身を偽って一人で生きているから考え深くもなりますね。ラストのほうで驚きの展開でみんなと離れてしまった時も、悲嘆にくれて動けなくなってもおかしくないところでもしっかりしてます。(ところで海洋物では主人公が一度は必ず遭難しますね)
男性社会で女の子が孤軍奮闘しているとどうしてもフェミニズムの声がきこえてくるのですが(女性が作者だとなおさら)、その辺はあっさり一蹴している感じですね。歴史物でフェミニズムを出すのはいやらしいと思うので今後の展開でどうなるか気になるところです。
ちょうど2巻が届いたところでkumikoさんの評を読んだので、ますます楽しみです。


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