2011/9/9  23:20

【読書感想】In the Belly of the Bloodhound - L.A.Meyer著(Bloody Jackシリーズ4巻)その4  読書&アート

クラリッサ「ジャッキー、あんたが死ななくて本当によかった。こんなことを言うなんて思ってもみなかったけど、本当よ。」

2巻で登場したクラリッサ・ハウは、お嬢様学校の中でも特に大金持ちの娘、金髪美人で高慢でイジワルで、典型的な敵役キャラでした。でも、ジャッキーと腕ずくの大喧嘩になった時、ロンドンのストリート+軍艦の下層甲板育ちのジャッキー相手に一歩も引かないばかりか、見事に丈夫な歯で噛みついてジャッキーにかなりのダメージを負わせたあたり、タダ者ではない感はあったのでした。

ジャッキーが選んだ(自分含め)3人のリーダーのうち、もちろんジャッキー自身は知識・経験がずば抜けていて、理由があって冷静。また、少女たちを導ける経験知識があるのは自分だけだと分かっているので、重い責任を感じてもいる。

ドリーは、経験知識においては特に他の少女たちと変わりはないはずのに、とにかく最初から非常に冷静で、客観的に状況を把握している。頭が良いのと、生まれつきの性格なんでしょう。それこそ、現代に生まれていたら経営者とか政治家になったタイプかも。

それに比べてクラリッサは、冷静というのではない、怯えて泣いているのでもない。彼女はとにかく、最初から最後まで激怒しているのです。誘拐されたことへの怒り、プライドを傷つけられた怒り、「よくもこの私にこんな失礼な扱いを」という怒り。黒人でありながら奴隷商人の仲間になっている男への怒り、また後には、ジャッキーを船長に密告した裏切り者少女への怒り。並の人間なら、あんまり怒っているとしばらくすると疲れてきて、むしろ落ち込んできたりするのだけど、彼女は違う。燃え上がるような怒りのパワーを最後まで維持しているのがステキです。

ジャッキーがいなければ、彼女は丈夫な歯と爪だけを武器にひとりで船員たちに突進して、あっさり殺されていたかもしれない。でも彼女もジャッキーの前歴は知っているし、馬鹿ではないので、「ジャッキーが何か考えるかもしれない、それに乗れば、こいつらに復讐することも可能かもしれない」と計算し、一応ジャッキーに協力的です。「でも、あんたを認めて信頼したってわけじゃないんだからね!」というツンデレ(?)姿勢は相変わらずですが。

クラリッサですが、奴隷商人に誘拐されるというこのシチュエーションは、彼女には特別の含意があります。と言うのは、彼女はバージニア(南部奴隷州)の大農場主の娘で、マサチューセッツ(北部自由州)にあるローソン・ピーボディの生徒としては、たぶん唯一の大規模奴隷所有者の娘なのです。(南北戦争開戦までは、まだ50年以上ある。)

ジャッキーが最初にローソン・ピーボディ女子学院に来た時、後にジャッキーの親友になるインテリ少女エイミー(彼女は毒を盛られたピム校長の看病のために学校に残ったので、今回は誘拐されていない)は、「奴隷所有者と同じテーブルには座らない」という理由で、ひとりで離れたテーブルで食事していました。

誘拐事件が起こる前、クラリッサは自分付きの奴隷のアンジェリクという少女を学校に連れて来て自分の世話をさせていて、奴隷制絶対反対のエイミーやジャッキーを「ここは自由州なのに!」と激怒させていました。奴隷を所有する立場だったクラリッサが、奴隷として売られてゆくという皮肉。ジャッキーも、「これで彼女も、奴隷の気持ちが少しはわかるだろう」みたいなことを、ちらっと考えたりするのですが...

だがしかし。

彼女たちを誘拐した一味には、ひとり黒人が混じっています。「シン・キー」と呼ばれるこの男は「自由な」黒人で、派手な服で着飾って、黒人を奴隷にしている白人の娘たちを奴隷として売り飛ばすことを、「復讐」だと思って喜びを感じているようなそぶり。クラリッサの激しい怒りは主にこの男に向けられ、ジャッキーがハラハラするほど徹底して、黒人差別用語も投げつけて馬鹿にし、挑発し、逆らい続けるのですが...

でもしかし。

ここでクラリッサが奴隷として売られる立場になったってことは、本当に「因果はめぐる」で、「復讐」で、「皮肉」なことなんでしょうか?私は、そこんとこ、「うーん..」と考え込んでしまったのですよね。

(しつこく続く。)




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