2008/4/3  23:29

「史上最悪」の著者インタビュー  ジョン・スチュワート

「The Daily Show」名作選の時間です(笑)。

前に、ジョンはゲストに対しては「たいてい」礼儀正しい、と書いたのですが…インタビューした相手に「人生最悪のインタビュー」と呼ばれたこともある、という話。それが、去年の秋のクリス・マシューズのインタビューです。

クリス・マシューズはニュース専門TV局のMSNBCで「Hardball」という番組をやっている、アメリカでは「pundit」と呼ばれる、テレビの政治評論家です。 その人が「Life is Campaign(人生はキャンペーン)」という著書の宣伝に来た時の話です。

このインタビューはけっこう有名らしくて、公式サイトで現物を見る前に、あちこちで「ジョンが相手をコテンパンにした」とか「Book interview from hell」とかいう噂を読んでいたので、どんなすごいことになっているのかと思って見たのですが…ジョンはちゃんと礼儀正しいのですよね。

ただインタビューの前にちゃんと本を通読して、率直に感想を言ってるだけで…「(この本は)根本的に間違っていると思う」と。礼儀正しい。でもきっつい(笑)。めちゃくちゃ面白かったのです。

The Daily Show with Jon Stewart 2007/10/2

<トランスクリプト全訳>

ジョン・スチュワート:「人生はキャンペーン」。ぼくの理解が正しければ、正しいと思いますが、あなたの言いたいことは、人は政治家が選挙キャンペーンで使う手法を用いて人生で成功できるということですよね。

クリス・マシューズ:そうだ。皮肉だろう?

スチュワート:ぼくはそれは根本的に間違っていると思いますが。ぼくには(自己啓発ならぬ)自己破壊本のように思えます。キャンペーンは、基本的に作為的なものでは?

マシューズ:そう、キャンペーンは作為になることがある。しかし政治家は、彼らがトップに登りつめるやり方は、本物だ。彼らはプロだ。政治家の言っていることを一言も信じなくても、彼らが成功するところは注目せずにいられない。(ビル)クリントンはどうやって成功したか?ヒラリーは?政治家たちはどのように成功したか?レーガンは?彼らがトップに登りつめたのには、手法がある。

スチュワート:それでは、誰もあなたの言うことを信じなくても、成功することはできるということですか。

マシューズ:そうだ。

スチュワート:これは悲しみについての本に思えてきました。違いますか?

マシューズ:違う。

スチュワート:どうして?どこの世界で?

マシューズ:例を挙げようか。ビル・クリントンは、大学時代、女性にモテた。ナンパするために…

スチュワート:大学時代だけじゃないでしょう。

マシューズ:…女性の話を聞くのが彼の手だった。友達が女の子にモテないと嘆くと、「話を聞け」とアドバイスした。男が大人になると、ビールを飲んで自分の自慢話をするようになる。しかし彼は、女の話を聞けと言った。そうすれば、女はいい気分になる。効果抜群だ。

スチュワート:それが効くのは、相手の話を本当に気にかけている場合だけです。政治家は人の話を聞きますが、それは策略です。

マシューズ:策略じゃない。私は君の話を聞いている。

スチュワート:いいえ、聞いてません。

マシューズ:聞いてないわけないだろう!自分の本をけなされているのに!

スチュワート:あなたは誰の言うことも聞いていないじゃないですか。ぼくはあなたの本をけなしているんじゃない、あなたの人生哲学をけなしているんです。この本は…

マシューズ:君は成功したいだろう?

スチュワート:ぼくは成功してますよ!

マシューズ:友達が欲しいだろう?

スチュワート:友達ならいます。欲しいのは本物の友達です。ちょっと待って下さい。人生を選挙キャンペーンのように考えるなら、人生の終わりには勝利宣言か敗北宣言をするんですか?

マシューズ:いいや。

スチュワート:なら、キャンペーンじゃないでしょう。

マシューズ:キャンペーンなんだよ。就職しようと思ったら、誰かに君を雇いたいと思わせなければならない。昇進もそうだ。商品を売ることも。常に、キャンペーンだ。理想の女性を得ることも。人生で望むものを手に入れるのは、すべてキャンペーンなんだ。

スチュワート:しかし、その芯には魂がないといけないと思いますが…

マシューズ:それは否定しない。君は頑固だな。クリントン夫妻を見たまえ。どれほど成功しているか。二人が何をしているか。彼らは人々の話を聞く。ヒラリー・クリントンはニューヨーク州を「話を聞くツアー」で回り、上院議員の座を勝ち取った。

スチュワート:「話を聞くツアー」という名をつけたからといって、聞いているとは限りません。そういうことです。ブッシュ大統領は「使命は達成された」という看板を掲げていますが、だからって達成されたことにはなりません。

マシューズ:大統領は話を聞いてなかったな。

スチュワート:キャンペーンというものは、仕組まれた宣伝写真です。この本には、善良であること、有能であることについては何も書いていない。

マシューズ:それは聖書だろう。そういう本ならもう書かれている。

スチュワート:(笑)この本だってもうすでに書かれてますよ。(マキャベリの)「君主論」という本です。

マシューズ:この本は「君主論」よりいい。読んだのか?どう思った?

スチュワート:読みました。これは悲しみのレシピだと思いました。正直に言いますが、読み終わっての感想は「これは策略のように思える。この本の通りに生きたら、人生は戦略になってしまう。」ということです。人生が戦略になってしまったら、人は不幸です。成功とは限りのあるものだと言っているように思えます。

マシューズ:違う、違う。この本にはいい話がたくさんある。人生で成功する人は、よい聞き手で、楽観的で、なんでも一人でやろうとせず人の助けを求めるのが上手でだということ。人の助けを求めるほど、多くの人を関わらせることができるからだ。

スチュワート:それはキャンペーンじゃなくて、良識でしょう。人の話を聞き、人を思いやること。しかし、この本には、「人を攻撃する時は、他の人が攻撃しないようなところを攻撃しろ」というようなことも書いてあります。

マシューズ:そんなことは言っていない。

スチュワート:ある候補がキャンペーン中に、対立候補を医療問題について攻撃したという話が出てきます。理由を聞かれて、「彼を医療問題について攻撃する人は他にいないから」と答えている。

マシューズ:いや、彼は国民健康保険に賛成で、対立候補はそれが医療の社会主義化だと言っていた。彼は正しいと考えることをしたんだ。しかし、彼はそこを攻撃目標に選んだ。対立候補が彼に賛成しないことはわかっていたからだ。

スチュワート:ぼくの言っているのはそこなんです。この本を読んでいると、「勝つために役に立つと思うことをしろ」と言っているように思えます。「正しいと思うことをしろ」ではなくて。

マシューズ:まあ、両方だな。

スチュワート:この本は前の方を強調しているように思えます。

マシューズ:その通り。君、「Hardball」に来ないか。公平にやろう。

スチュワート:言っていいですか…ぼくは「荒らし」はやりません。

マシューズ:信じられん。最悪の著者インタビューだ。私が受けた人生最悪のインタビューだ。君は最低だ。君は大物だから、私を怖がっていないと思っていたが。

スチュワート:怖がってはいませんよ。

マシューズ:この本が怖いのだろう。君が怖れることが書いてあるからだ。

スチュワート:この本には怖いものもありますね。ファシズムとか。ファシズムは怖いですね。…まあとにかく、あなたの仕事は大好きですよ。

マシューズ:ひとつ話をしてもいいか?

スチュワート:かまいませんが、編集でカットしますよ。

マシューズ:わかった。価値のある本なのに、君には通じないようだ。君はゼル・ミラー(※)だな。

スチュワート:いいえ、ぼくは「決闘」する気はありませんね。とにかく、感謝します…あなたの番組に出ますから、そこで怒鳴っていいですよ。ぼくも本を書きますよ。…仲直りします?



私はこの本を読んでいないし、読む気もないので何とも言えないのですが…公平を期して言えば、そうひどいばっかりの本というわけじゃないらしく、Amazonの書評なんかでは評価する声もあります。「最近の具体例が多く挙げられていて面白いし、実践的なアドバイスが豊富」だそうです。

…でも多分、ジョンの言っているのはそういうことじゃないんでしょうね。

「ぼくはあなたの本をけなしているんじゃない、あなたの人生哲学をけなしているんです。(I'm not trashing your book. I'm trashing your philosophy of life.)」最高(笑)。

まあもちろん、「ゲストに呼んでおいてその本を批判する」っていうのはどうか、という意見もあるかもしれませんが…

多分そこで重要なのは、このクリス・マシューズという人が、有名なテレビの政治評論家だということ。彼は「リベラル派」でオバマ支持派で、ヒラリー・クリントンに対する執拗な(かなり男女差別的な)攻撃で批判されたりもしているらしい。まあ、政治評論家が政治家を批判するのは仕事なんですけど…そのココロというか、批判の根底にある本人の哲学っていうのが、もしここで話しているようなことなら…言葉の重みってものがないわけだし。

とにかく、ひとつ思ったのは、自分の本についてさえもうちょっとマシな弁護ができないようではマキャベリストとしても失格で、どうやって「人生のキャンペーン」とやらを戦ってゆくんだろうかこの人、ということでした。

※ゼル・ミラー 民主党、ジョージア州の元上院議員。2004年の大統領選で、民主党員でありながらブッシュ大統領を支持した。当時、ミラーはマシューズの番組に出演して彼と「決闘」した。



2008/4/5  1:14

投稿者:Kumiko

スチュワートは犬好きみたいですけど(笑)。

クリス・マシューズの鈍さは、私も信じられませんでした。「女にモテるには話を聞いてやること」なんて言って、ジョンが「それが効果があるのは言うことを本当に気にかけている時だけ」と言ったら、いかにも馬鹿にした感じで「は!」ってせせら笑っているのね。この人が、他局で自分の番組を持っている有名な人だと知らなければ、ジョンを引き立てるためにわざとやってくれてるのかと思うところです(笑)。

私も、日本のマスコミにはいいかげん愛想を尽かしていたんですけど、これの関連でいろいろ読むと、アメリカのマスコミもいい加減ひどいようですね。アメリカの政治に関しても、こうして見ていると日本の方が数段マシなように思えるし。(特にこの大統領だから。)でも、ひとつだけ言えるのは、アメリカのエンタテイメントだけは、もう日本とは全然比べられないほど素晴らしい(そしてアメリカのエンタテイメントの最上の部分は日本に紹介されていない)ということです。

2008/4/4  14:59

投稿者:じゅうばこ

コルベア氏と猫の写真を、うっとり見ていました。あの猫の、前につきだした太い前脚は、もうこたえられません。
独裁者は猫が嫌い、リベラリスト?は猫が好きとかいう迷信があるようですが(笑)。

「最悪のインタビュー」も笑いました。最近日本でも、教育や研究の場にまで、やたら「戦略」という言葉が使われるのが、私はいやでしかたがありません。私も頭の中は常に戦闘モードの女ではありますが、だからこそ、そういう言葉や考えでやってはならない分野があると思うのです。そんな言葉を使っていると、何か絶対まちがってしまう分野が。

ちなみに、私の職場で「戦略室」という部署ができた時、2年近く私はいやみのために、毎日迷彩服を着て職場に行ってました(笑)。(そのせいじゃないと思いますが、今は廃止されてます。)
このインタビューを読んで、自分がそんな変なかたちで抵抗するしか表現できなかったこだわりが何だったのか、少し見えてきた気がします。

それにしても、私はKumikoさんの訳を絶対信じてはいるのですが、それでもこの作者マシューズさんの言ってることのしょーもなさ(粗悪さやら鈍さやら雑さやら)が、どうしても信じられません。

このところしばらく、ここを拝見して、日本とアメリカのマスメディアの質の差に落ちこみそうになってましたが、そーゆー意味では元気が出たわ。あっちにも、こういう人は、そこそこの地位にちゃんといるのね(と安心してどうする)。


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