「『The Newborn Touch』(Contemporary)/Phineas Newborn Jr.」
愛聴盤(JAZZ)
このアルバムは、私が所有する数少ないオリジナル盤の中の1枚です。買った時(中古盤です)に、ジャケットに保護用のビニールがかかっていたのですが、いまだにはがせないでいます...貧乏性...
フィニアス君は、アート・テイタムの流れを汲む驚異的なテクニックを持つピアニストなのですが(「10本の指と88のキーをフルに使うピアニスト」などと言われております)、いわゆる「パウエル派」が幅を利かせているジャズ・ピアノ界の状況を反映してか、日本での人気の方は今イチって感じです...すげぇピアニストなんですけどねぇ...
彼には精神障害という持病のため、リーダー作もあまり多くなく、好/不調の波が大きいとも言われていますが、このアルバムも含めて60年代のContemporary盤では、彼の比較的安定したプレイを楽しむことが出来ると思います。
このアルバムは、トリオ(リロイ・ヴィネガー、フランク・バトラー)編成となっております。名盤の誉れ高い『A World of Piano!』でもそうですが、選曲が非常にユニークですね。ピアニストがあまりやらないホーン・プレイヤーの曲を多く取り上げているのが特徴です。
ピアノトリオの選曲にしては異様な感じもしますが、別に奇をてらっている訳でもないんでしょうね...ピタッと彼のプレイスタイルにはまっています。誰が決めているのかは分かりませんが、渋い選曲だと思います...
そういえば、オリジナル曲をほとんど使わないところもアート・テイタムに似てますね...
このアルバムの曲名を書いてみましょう(括弧内は作曲者)
A-1 A Walkin' Thing (Benny Carter)
A-2 Double Play (Russ Freeman)
A-3 The Sermon (Hampton Hawes)
A-4 Diane (Art Pepper)
A-5 The Blessing (Ornette Coleman)
B-1 Grooveyard (Carl Perkins)
B-2 Blue Daniel (Frank Rosolino)
B-3 Hard to Find (Leroy Vinnegar)
B-4 Pazmuerte (Jimmy Woods)
B-5 Be Deedle Dee Do (Barney Kessel)
ほとんどがウエスト・コーストのジャズマンの書いた曲ですが、ベニー・カーター、オーネット・コールマンの曲を持ってくるあたり渋いですね...
お気に入りは、「Double Play」、「The Sermon」、「Diane」、「The Blessing」、「Grooveyard」、「Be Deedle Dee Do」あたりの曲になります。
「The Sermon」などは、裏ジャケによると左手のみで弾いているそうです...なんかテクニックをひけらかしているような部分がちょっと鼻に付きますが、すばらしい演奏です...左手だけでしっかりブルースしてます。
ペッパーの「Diane」は沁みます...初期のアルバムにおける、テクニックで曲を無理やりねじ伏せるような感じがなくなって、しっかりと原曲を噛み締めながら演奏しているのを聴いていると、ピアニストとしての深みが増しているのがよく分かります...名演だと思います。
オーネット・コールマンの「The Blessing」も大変気に入っております。全体的に地味〜な印象のあるこのアルバムの中で一番ノリの良いフィニアス君を堪能できる曲になっております。
「Grooveyard」は、ウエス・モンゴメリーでも有名な曲ですが、こちらの演奏もどうしてどうして...この曲のベスト・トラックと言っても良い程の出来映えだと思います。
私は大変気に入っているアルバムですが、ちょっと地味〜な仕上がりとなっておりますので、今までフィニアスを聴いたことのない人が、いきなりこのアルバムに手を出すのはおやめになった方が良いと思います...
最初に聴くんだったら、『A World of Piano!』や、バブさんに教えてもらった『Harlem Blues』が断然お勧めです。
あ、このアルバムにも不満な点が1つありました。64年の録音なのにモノラルなんです...音自体はさすがContemporaryだけあって、すばらしいのですが...ステレオ盤もあるのでしょうか?

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