「『Leapin' and Lopin'』(Bluenote:4091)/Sonny Clark」
愛聴盤(JAZZ)
いやぁ〜、どの曲を取っても黒人のハード・バップ臭がプンプンするアルバムですね。以前、『Jackie's Bag』のB面をハード・バップの典型だと言ったような記憶がありますが、こっちが上かな?白人のジャズにはないパワー、野暮ったさ、重〜い感じ、ノリ...といったおいしい所がぎっしり詰まっております。このアルバムには。
メンツがまた凄い!トミー・タレンタイン、チャーリー・ラウズ、ブッチ・ウォーレン、ビリー・ヒギンズ(A面2曲目「Deep In A Dream'」にのみアイク・ケベック参加)...渋い...渋すぎます...よくもまぁ、こんな凄いメンツを考え付いたものです。アルフレッド・ライオン恐るべし...
これら最強の2流(?)ミュージシャン達により創り出される音からは、チャーリー・パーカー、バド・パウエルなどのプレイに見られる天才的なひらめき、切れ味みたいなものは一切感じられません。テーマのアンサンブル部分が合ってなかったり、ミストーンがあったり...でもこのアルバムはそんな些細な部分に目くじらを立てるような無粋な聴き方をしたら台無しになってしまいます。彼らから発散されるハード・バップ魂を何も考えずに堪能すべきでしょう...
彼らの音楽を料理に例えると...少なくとも、一流シェフが腕を振るった高級フレンチなどでは決してありません。そうですねぇ...汚い店構えなのに行列の絶えない高松の名店の讃岐うどん、しょんべん横丁(新宿)の中華料理屋さんのチャーハンみたいなものでしょうか?ぱっと見はヤバそうだけど、食ってみるとメチャメチャ旨いB級グルメみたいなもんですね。
実際の中身ですが...全部いいです。A面1曲目の「Somethin' Special」はクラークオリジナルのブルースです。こういったマイナー・キーのブルース弾かせたら無敵ですね。クラークさんは。日本人に高く評価されているの理由は、彼のこういう(陰がありながらもしっかりスイングしている)プレイにあると思います。能天気なアメリカ人には今ひとつピンとこないところなのかもしれません。
B面1曲目の「Eric Walks」はブッチ・ウォーレンの曲ということになっておりますが、原文ライナーでアイラ・ギトラーさんも書いていらっしゃいますように、ガレスピーさんの「Woodin' You」に大変よく似た曲です。現在なら訴訟問題にでもなりそうな位そっくりですが、ガレスピーさんが太っ腹だったのか、当時はそういった著作権みたいなものの取り扱いが曖昧だったのか良く分かりませんが、問題にはならなかったみたいですね。
ウォーレンさんの粘っこいベースも前面に出てきており、なかなか聴きごたえのある演奏でございます。
唯一のスタンダードである「Deep In A Dream'」もいい感じに仕上がっておりますね。この曲にだけケベックさんを起用したのは大正解だったと思います。ライオンさんもいい仕事してます。よっ!この凄腕プロデューサー!!
紹介してない曲も、全部お勧めです。ハード・バップがどういうものなのかピンとこないとお悩みのあなた...これがハード・バップです!是非、聴くべし!

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