「『Born to Be Blue』(Bluenote:84432)/Grant Green」
愛聴盤(JAZZ)
これは、80年台(85年?)に入ってやっと陽の目を見た、ブルーノートお蔵入りシリーズの一枚です。
録音が62年3月ですから、20年以上も経ってからの発売ということになります。。。フロントにアイク・ケベック、リズム隊にソニー・クラーク、サム・ジョーンズ、ルイ・ヘイズを迎えたクインテット編成によるセッションでございます。
アーシーさが持ち味のグリーンさんのアルバムには珍しく、ジャズ・ギターの本流を行くプレイが楽しめる作品となっております。とは言っても、グリーンさん特有のフレーズ(訛り)はしっかりと出ておりますので、グリーンさんが好きな人が聴けば、彼が弾いていることは一発で分かってしまいますね。。。
いつもとちょっと違うグリーンさんのプレイが聴けるという点で、このアルバムが陽の目を見た意義は大きいと思いますが、なぜブルーノート(ライオンさん)はこのアルバムをお蔵にしてしまったのでしょうか?
私がこのアルバムを聴いていつも感じるのは、なんかコンボとしての纏まりのなさというか、メンバー間の息が合っていないというか、ばらばらな印象を受けます。。。個々のプレイヤーのソロは素晴らしいんですけどね...どの曲聴いてもグリーンさん、ケベックさんのソロは絶品です。
入念なリハーサルを行った上でレコーディングに臨むブルーノート(ライオンさん)の方針を考えた場合、このような仕上がりになること自体に違和感を覚えます...ライオンさんの目の黒い内は決してリリースされないであろうことは容易に想像がつきます。。。
上記のような印象を与える最大の原因はソニー・クラークさんにあると思います。。。はっきり言って不調ですね...指がよく動かないのか、もつれたようなフレーズ、ミストーンが耳に付きます...でも、『Jackie's Bag』の時のような、いかにも体調が悪そうな弾き方ではなく、結構明るい感じなので私は嫌いじゃないです。。。絶好調の時と比べると別人のようですが...
なんか、このアルバムをけなしているかのような文章になってしまいましたが、結構好きです。このアルバムのノリ。。。元々、リハなし一発勝負みたいなセッションは嫌いではないので。。。逆にトチったりしてくれた方が、親近感が湧いてきたりして。。。
一番好きな曲は「Cool Blues」。チャーリー・パーカーさんの曲ですね。この曲はLPには入っていないらしいです(私のはCD(輸入盤)です)。
クラークさんのソロの部分で、もう1コーラスやろうとしているのにケベックさんが強引に割り込んでくる所が堪りません。。。特にクラークさんの最後の一音が良い!
クラークさんは、あっけにとられたのか、頭に来たのかは分かりませんが、ケベックさんのソロの頭1コーラスはバッキングしておりませんね。。。
アルバムとしての完成度といった点では、ライオンさんならずとも合格点を付けるのは厳しいものがあるかもしれませんが、私は良いアルバムだと思います。
一糸乱れぬ演奏だけが良い演奏と言う訳でもないと思いますし。。。このアルバムのような良い意味でのルーズな演奏もまんざら捨てたものではないと思います。

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