
ジャズに目覚めた私がまず始めたのは、情報収集。
当時はインターネットのような便利なものはなく、九州は熊本の片田舎に住んでいた私にとって、頼れるものと言えば本のみです。早速本屋へ出かけ、探しまくっていたら...見つけました!『スイングジャーナル』誌。
早速購入(表紙はビル・エバンスだったかな?)。帰ってぱらぱらページをめくっては見たものの、何がなにやらさっぱり解らず...
とりあえず、良さそうなアルバムを買って見ることにした。目に付いたのが、マイルスの「クールの誕生」。ジャズ史に残る歴史的名盤!”みたいなコピーが書かれている。「歴史的名盤なら間違いあるまい」と思い購入を決定した。週末にレコード屋(熊本市内にある「マツフジ」。現在もあるかどうか不明)に向かう。店内に入り、わき目も振らずジャズコーナーへ...ありました!「クールの誕生」。黒を基調としたジャケットデザイン...渋い!...めちゃめちゃジャズっぽい。すっかり嬉しくなった私は、「クールの誕生」の広告ページに一緒に載っていてジャケットを覚えていた、ショーティー・ロジャース/ジェリー・マリガンの「モダン・サウンズ」というアルバムも同時に購入してしまった。
その広告ページはキャピトルレーベルのアルバムを数枚リリースした際の広告で、他にサージ・チャロフの「ブルー・サージ」もあったのだが、ジャケットデザインがいけてなかった...よって、「モダン・サウンズ」に決定。
今にして思えば、「ブルー・サージ」を買っておけば良かった...大好きなソニー・クラークが参加しているのに...「ブルー・サージ」は未だに購入していません(ジャケ買いは禁物...)。
生まれて初めて買ったジャズのアルバムを聴いての感想...
”なんじゃこりゃ〜!俺の求めている音と全然違う!”、”アンサンブル重視の、緻密に作りこまれている感じの音作り...合わない”、”そもそも、ジャズって「クール」じゃだめでしょう。”なんてことを駆け出しのひよっこは感じたのでした。
ビ・バップの行き詰まりを打開すべく登場した「クールジャズ」。ジャズ史を研究する上では確かに重要な作品かもしれないけど、嫌いなものは嫌いです。
後年、マンハッタン・トランスファーの「ヴォーカリーズ」というアルバムで、「クールの誕生」の1曲目、「ムーヴ」を聴いて懐かしさは感じましたが...
”歴史的名盤”が必ずしも自分の好みに合う訳ではない(当たり前ですが)という教訓をこのアルバムからは貰いました。また、マイルスに対する偏見も出来上がってしまい、彼のすばらしい作品との出会いを遅らせてしまう原因にもなってしまいました。
色んな意味で思い出に残る作品ではあります。

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