「都道328号線を巡る小平市住民投票を地元民の目線で考える」
日記
先日行われた小平市の住民投票の件が盛んにメディアでも取り上げられ、認知度も高くなって今や全国区の話題となった感のある都道328号線計画の見直し問題。僕は運動を応援していた哲学者の國分功一郎先生のツイートやMXTVのニュースなんかで見ていたので、ここまでの話題になる前から状況は知ってはいたのですが、この計画自体を巡る話というよりも、住民投票のやり方を巡っての小平市側の不誠実な対応が「これはどうなの?」という形で話題になってる感が強いですよね。
そもそもこの計画自体が1963年に都市計画決定されたもので、全長33.2キロに及ぶ大道脈を作ろうという計画なんですけど、今回の住民投票は府中−東村山市間に残されている約13キロに亘る未着工部分のうち、小平市内分(約1.4キロ)の計画を「住民参加により見直す」か「見直しは必要ない」かを問うものだったんですね。で、小平市民が何でそんなに反対しているのかというと、西武国分寺線鷹の台駅北側に広がる玉川上水沿いの雑木林を伐採してまで計画を断行する必要があるのかっていう点で。
行ったことある方なら分かると思うんですけど、この鷹の台駅から津田塾大学へ向かう道に広がる玉川上水沿いの遊歩道って、本当に原生林というか、どこか手付かずな感の残る自然が残されてるんですよね。「道路計画自体を50年もほったらかしておきながら、今になって自然を壊して約200世帯の立ち退きさせてまで通すべき道なのか」というのが住民側の意見。そこで住民側は権利として認められている直接請求権を行使すべく、必要な署名の約2.5倍に当たる7183人分を集め、2月に住民投票条例の制定を直接請求したわけです。
その条例案は3月の市議会で可決されたんですが、市はその後「投票率50%未満の場合は不成立」とする成立要件を加えた条例改正案を提案。市民団体の抗議をよそに4月の臨時会で可決されてしまいます。投票率が50%に満たなかった場合、投票の結果を公表すらせず破棄するという方針のため、市民団体やそれに賛同する人たちは投票に行くよう盛んに呼びかけてはきたものの、結果として投票率は35.17%となり成立要件を満たせず、この案件は不成立となってしまいました。
この「投票率50%」というのが想像以上に高いハードルであるのは言うまでもなく、前回の衆議院議員選挙や直前の市長選でも、市内の投票率は50%という数字に到底及びませんでした。では何故このような成立要件が後付けで規定されてしまったのかといえば、市長の言葉を借りれば
「50%未満の場合は特定団体の意見を聞くのと等しいことになりかねず、市民の総意とは言えない」という論理によるもの。一見真っ当な物言いにも見えますが、冷静に考えたら自分が当選した市長選の投票率も今回と大して変わらないわけです。
その論理で行くと、「だったら市長選も市民の総意と言えないだろうが」と思うのは当然の流れ。実際今回の住民投票で投票した方は51010人いたそうですが、現小平市長は33106票で当選しているとのことです。もちろん結果が公表されない以上、今回の住民投票で反対を投じたのが何人いたのかはわかりませんが、このような形にした以上は投票したほとんどの人が反対票を投じたはず。その点市長はどう考えているのか気になるところです。そしてこの結果を受けて、あろうことか都は28日に都道328号線の事業認可申請を行ったんだそうな。
このあまりにスムーズな、こちらから見れば不自然極まりない流れで事が進んでいるのを見ると、全ては仕組まれていたのだと思わずにはいられません。実際國分さんも
「住民投票の可決後、1)市長は「50%成立要件」の修正案を密かに準備、2)再選後に不意打ちでそれを提出、議会で可決、3)50%は超えないから開票せず、4)投票後に間髪を入れず東京都は事業認可申請、5)小平市はそれを理由に情報開示しない。(略)市長はこのタイミングで東京都が事業認可申請するのを知らされていたのだろう。」とツイートしています。
こういう書き方をしてしまうと、一連の都と小平市のやり方には不信感が募りますが、ではなぜ都や小平市はそんなに急いでいるのでしょうか。実際にこの道路が完成したとしたらどのようなことが起きるのでしょうか。それは単に「50年間寝かせてしまっているから」とかそういう事情とは異なるように思います。ということで、実際にこの「都道328号線」の予定地は一体どうなっているのか、コレが出来るとどうなるのかを、現国立市在住の地元民の目線で見てきました。
まず東京都建設局のホームページ(
http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/douro/gaiyo/01.html)を見てみると、これが「府中所沢・鎌倉街道線(鎌倉街道)」として計画されてることがわかります。僕が計画予定地で見た看板かなんかには全長33.2キロって書いてあったので、大体町田から鎌倉街道(都道18号)を通じて府中を抜けて国分寺市に入り、中央線の線路を越えてひたすら北上して件の小平市を抜け、五日市街道、青梅街道、新青梅街道を突破して所沢まで行くと大体そんな距離ではないかと。
今んとこ町田から府中への道は、僕がしょっちゅう入院していた多摩総合医療センター(旧府中病院)の脇にある根岸病院のところまで繋がっていまして。ちなみにそこの道路も僕が小学生の頃はまだ全然出来ていなくて、それこそしょっちゅう入院し出すようになった高校くらいの時、突然デカい幹線道路が出来ていてビックリした記憶。んで、その根岸病院脇の道は道路として形にはなってるんですけど、その先が出来ていないからまだ府中側から北に行くことは出来ない状況。
で、そこがどのようにぶつかるかというと、さっきも言ったとおり中央線の線路にぶつかるんですね。そこに新たな陸橋が今年の8月くらいにかかるそうなんですが、今はこんな形になってます。どれだけデカイのかはちょっとわかりづらいとは思いますが、もちろん幹線道路ですからそれぞれ二車線は確保できる幅はあります。
その先をたどって行くと、知らないうちに用地買収が進んでいるようで。このフェンスに囲まれている部分が道路になるところ。
中には用地買収に応じていないのか、周りが更地になっていながらポツンと残っている家もチラホラ。
その先は後もう道路にするだけって状態でズドーンと空間が続いてます。
ちなみに恋ヶ窪駅と鷹の台駅間の踏み切りは線路の下に道路が通る形となるようで。そこの工事現場では工事の経過がこんな形で展示されてたり。
で、(ところどころ用地買収が進んでないところもありつつも)こんな感じで道は続いているんですが、その道が現状で到達する最終地点が五日市街道とぶつかるここなんです。
見てお分かりだと思うんですが、こんな幹線道路がぶつかるところが対面通行みたいな細い道なんですね。で、この道は少し東側に進むと府中街道にもぶつかるんですが、そこを曲がる車で慢性的に混む道なんです。328号線整備する前にこっちやる方が先な気がすごくしますが笑、実際問題こんなとこで道路が止まっちゃったら大変なことになるわけです。出口がこんな狭い道なんですから、どう考えても車動かなくなるだろってレベル。だからこの先の用地買収を進めて、是が非でも道路作る必要があるというのはよくわかる。
そっから先の予定地も見てみたのですが、ものの見事に用地買収は手付かずでガッツリ住宅街が広がってます。本当に200戸の立ち退きくらいで済むのか疑問。更に問題の雑木林が玉川上水に沿って続いてるわけですから、さっさと片付けてしまいたい都や小平市の気持ちも理解できる。正直なところ、この道が仮に所沢まで繋がったとするとバイパスから関越道にも圏央道にも一本で抜けられるようになるはずだし、北を目指す分には非常に便利になるのでは。府中街道の混雑がだいぶ解消されるというのも大きいと思うし。
小平市民にとってあの雑木林が大事なのももちろんわかるんですが、冷静に考えたらあの雑木林が何故あのような形で残っていたのかと言えば、「いつかはここに道路が通るから」と手間をかけて道などの整備をしなかった名残に他ならないわけで。付近住民にとっては大変な問題だけど、結局今回の投票率が伸びなかったのも、直接関係ない市民にとっては交通の利便性の方が重要視されていたからだと思う。賛成の人間にとっては、わざわざ日曜日に投票所に足を運ぶ必要もないのだから。
この問題がどのような形で決着を見るのかわかりませんが、30分チャリ漕げば現場に出くわすような場所に暮らしている地元民にとっては、この大動脈が出来ることのメリットの方が圧倒的に大きいのも事実。ましてやここまで計画が進んでしまっているものを今更止められるような状況にはもはやないでしょうし。出来れば僕らが40歳になるくらいには、出来ていてくれると嬉しいかなと思うのでした。ただやる以上は鷹の台駅前の自然の整備もしっかりとやってもらいたいですね。

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