地主さんのお家から武者達の集まる神社まで歩く。青いたんぼの中を。
神社までの距離は結構ある。30分、は大袈裟かもしれぬが、それに近いくらいの時間歩いたと思う。
神社までの道すがらも近所の人達は家から出て騎馬武者を見送る。中には『景気づけに!』と缶ビールを武者に差し出す近所の方もいらっしゃるが、これはこれである意味、飲酒運転になるのだろうか、武者は丁重に馬上からこれを断る。(余談だが、缶ビールの様にあからさまに『お酒』はまずいが、紙コップに入ったビールのように外からは何が入ってるか分からない場合はオッケーらしい。祭だしね!あまりお固い事はいいっこなしよ!)
通りの先に小さく見えていた神社が段々大きくなってくる。神社境内の木々の間に揺らめくは無数の旗や、のぼり!同時に馬のいななきがせわしなく聞こえて来る!馬達は正にイメージ通りに
「ブルルルッ!ヒヒーンッ!」
といななき、
「カッカッカッ…」
と心地よいひづめの音をアスファルトにたてながら歩いていく。
神社に集合した騎馬武者はもう一カ所、決められた場所まで移動し、そこで隊列ど順番を整え、約3キロ先の、今日の舞台『ひばりヶ原』を目指す。
沿道の人の数はますます増える。ござを敷いたり、日よけのテントをたてたり。沿道には所々、ちょっとした、たらいくらいの大きさのバケツが備えつけてあり、なみなみと水が満たされている。時折、そのバケツに馬は近づき、その水を飲む。馬が水飲む度に歓喜するは小さな子供達!
残念である!実に残念な事に、僕はここで電車の時間なのだ。祭本番は午後1時から。しかし僕の電車出発時間は午前11時!
馬達は普段感じられない熱気に興奮し、お互い接触しそうになる馬もいる。そんな熱気に街中が興奮している。もちろん僕もそんな渦に巻き込まれている!それだけに残念っ!
「あー!もしもし!うん、俺や!もうそろそろ出発や…」
近くにいた騎馬武者の一人が馬上から携帯電話で喋っている!鎧兜の一体どこに携帯をしのばせていた!?
甲冑に身を包み、馬にまたがっていながら、携帯電話で話す、そんなあなたに
残念ーーっ!!


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