「あの〜、これ…お釣りとり忘れてましたよ…」
そう言って僕は40円を老人に渡した。僕が食券を買うとちょうどの金額のお金を入れたはずなのにチャリンチャリンと小銭が落ちてきたのだ。
「あぁ…すいません。ありがとうございます」
とご老人。
良い事をした気分になる。たった40円すら僕は猫ババしなかったのだ…僕はなんて…いや…待てよ…40円の小銭すら猫ババしなかったのか、それともたった40円の小銭だったから猫ババしなかったんではないのか…たった40円で素敵な人格を印象づけられるんなら安いもんだ、もしあれが10000円なら僕は猫ババしてたのではないか!?
いや!10000円だったらその高額さにむしろ確実にその老人に届けたに違いない。だからこそ40円という少額のお金さえ猫ババしなかった事にその行為の高潔さがあるのではないか?例えば10000円という高額なお金を猫ババしなかったとしたら、それは正直者ではなくて、ただの度胸がないだけの事ではないのか!だとしたら!だとしたら…
えぇーいっ!なんだ?この中途半端なダークサイドは!いいじゃん!40円届けたんだから!だからもし10000円落ちてても………届けますとも!届けてみせますとも!

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