知り合いのライブを観に行った。ワンドリンク付き1950円。こじんまりとしたライブハウス内のテーブルにコーラの入ったグラス。ライブを観てるうちに氷が溶けたのだろう。グラスの中の氷がカランと音をたてた。
『鎌倉太郎土佐日記』でも書いたが、僕のばあちゃんは田舎で寝たきりの生活を送っている。つい何年か前までは、むしろ年の割りに元気なばあちゃんだった。年に一回は上京して僕のアパートの部屋を掃除しに来たもんだ。僕の留守中、アパートの屋根が汚いからと、窓から屋根に下りて屋根の掃除をしていたところを大家さんにみつかり、僕が怒られた事もある。ずいぶん元気な人だったのに。
少年時代、夏休みは毎日、ばあちゃん家で野球に興味もないくせに高校野球を見ていたものだ。テーブルの上にサイダーの入ったグラス。氷が溶けて『カラン!』という音。ばあちゃんはこの音をこよなく愛していた。その音が聞こえると決まって
「まあ、涼しげなええ音やねぇ。」
と心地よさそうだった。
ライブハウスの薄暗い客席の中、この『カラン』という音に、遠く離れたベッドの上で寝ているであろう、ばあちゃんを僕は今夜、思い出す。


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